次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生)はDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィー〈Duchennemusculardystrophy〉で両親、弟(7歳)と2階建ての家に4人で暮らしている。呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院した。Aさんの呼吸状態は安定し、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了したため、自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。両親は「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と病棟の看護師に話した。
退院後6か月。A さんは人工呼吸器を装着して特別支援学校に通学することに も慣れてきた。A さんの母親から「弟がインフルエンザと診断された。弟は2階の 子ども部屋、A は1階のリビングで過ごしている。家族全員がインフルエンザの 予防接種を受けた。A にインフルエンザがうつらないか心配」と訪問看護師に連絡 があった。 訪問看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
人工呼吸器を装着した14歳男子の弟がインフルエンザと診断された家庭への、訪問看護師の対応を問う。ケアを父母で分担し、弟の担当は弟以外と接触しないことを提案する、である。
この問題で問われていること
家庭内での感染の広がりを、実行可能な方法で防げるか。
しくみから理解する
家庭内での感染を防ぐ基本は、感染した人とそれ以外の人との接触を減らすことになる。この家庭では、弟が2階の子ども部屋、患者が1階のリビングで過ごしており、空間の分離は既にできている。次に必要なのが、人を介した伝播を断つことで、そのために介護者を分けることになる。父母のどちらかが弟を担当し、その人は患者のケアに関わらない。もう一方が患者を担当する。こうすれば、手指や衣服を介したウイルスの持ち込みを大きく減らせる。加えて、手指衛生、マスクの着用、換気、共用物の消毒を行う。呼吸筋の筋力が低下した患者にとって、インフルエンザは肺炎と呼吸不全に直結するため、予防の意味が大きい。
選択肢ごとの確認
「特別支援学校を2週間休むことを勧める」ことは、根拠が薄く、生活を過度に制限する。感染の危険は家庭内にあり、学校を休んでも家庭内の接触は減らない。また2週間という期間にも根拠がない。インフルエンザの潜伏期は1〜4日、感染力のある期間は発症前日から発症後5日程度(学校保健安全法では、発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまで出席停止)になる。
「感染予防の目的で入院することを医師に相談する」ことは、過剰な対応になる。入院には移動の負担、環境の変化、そして院内での他の感染への曝露という不利益がある。家庭内での分離と衛生の徹底で対応できる段階で、入院を検討するのは順序が違う。
「予防接種を受けているのでうつらない」という説明は、事実と異なる。インフルエンザワクチンは、発症をある程度抑え、重症化を防ぐ効果があるが、感染を完全に防ぐものではない。「うつらない」と保証すれば、家族が予防の行動を緩め、かえって危険を高める。ワクチンの効果は、正確に伝える必要がある。
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混同しやすいポイント
誤肢は、根拠のない制限、過剰な対応、そして誤った保証になっている。在宅の場面では、生活を大きく変えずに実行できる方法を選ぶことが原則になる。既にできていること(部屋の分離)を確認し、その上に足せることを提案するという考え方が、この設問の要点になる。ワクチンの効果を「うつらない」と言い切らないことも、繰り返し問われる論点になる。
理解を深める
在宅療養者の家庭内感染の予防を整理する。空間=可能なら部屋を分ける、共用の空間の使用を減らす、こまめに換気する。人=介護者を分ける、感染した人の世話をした後は手洗いと着替えを行う、患者に接する前後で手指衛生を行う。物=タオルと食器を共用しない、ドアノブやスイッチなど手が触れる場所を消毒する、洗濯は通常どおりでよい。マスク=感染した人と、ケアをする人の双方が着用する。そして観察=患者の発熱、咳、痰の増加、酸素飽和度の低下といった変化に早く気づく。呼吸機能が低下している患者では、症状の出方が乏しいまま急速に悪化することがあるため、いつもと違う様子(元気がない、食が進まない、呼吸が浅く速い)にも注意する。予防としては、家族全員の予防接種(この家庭では実施済み)、そして症状が出た場合の連絡先と、早期の抗インフルエンザ薬の使用について、あらかじめ主治医と相談しておくことが挙げられる。訪問看護師自身も、感染を持ち込まないよう、体調の管理と手指衛生を徹底する。
間違えやすい考え方
『適切な対応』を問う型で、誤肢が根拠のない制限・過剰な対応・誤った保証である。実行可能な方法で切る。
5分で振り返る
①家庭内感染の予防=感染した人とそれ以外の接触を減らす。②空間の分離ができていれば、次は介護者を分ける。③手指衛生、マスク、換気、共用物の消毒を併せて行う。④インフルエンザワクチンは重症化を防ぐが感染を完全には防がない。「うつらない」とは言えない。⑤学校保健安全法の出席停止=発症後5日、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで。⑥感染予防目的の入院は移動の負担と院内での曝露があり過剰。⑦呼吸機能の低下した患者は症状に乏しいまま悪化しうる。いつもと違う様子に注意する。
1分チェック
- 家庭内でインフルエンザが出たら。→ 介護者を分ける(弟の担当は患者に接しない)。
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