次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(72歳、男性)は、妻と2人暮らしで子どもはいない。定年後は2人で旅行するのが趣味であった。Aさんは、1か月前から残尿感や夜間頻尿が気になり病院を受診した結果、前立腺癌〈prostatecancer〉と診断され根治的前立腺摘出手術を受けた。退院後は、手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行うことになっている。
放射線外来の看護師が行うA さんへの説明で正しいのはどれか。
公式正答:4
解説
前立腺癌の術後に外照射療法を受ける72歳男性への説明を問う。「照射部位は強くこすらないようにしましょう」である。
この問題で問われていること
放射線による皮膚障害の機序から、日常のケアを導けるか。
しくみから理解する
放射線は、分裂の速い細胞を強く障害する。皮膚では、基底層の細胞が影響を受け、新しい細胞の供給が減るため、皮膚が薄く弱くなり、発赤、乾燥、色素沈着、そして進行すると水疱や潰瘍を生じる。この状態の皮膚は、わずかな摩擦でも損傷しやすい。したがって、洗うときはこすらず、石けんをよく泡立てて手でやさしく洗い、押さえるように水気を取る。衣類は柔らかく、締めつけないものを選ぶ。ひげ剃りは電気シェーバーを用い、粘着テープを照射部位に貼らない。摩擦を避けるという一点が、皮膚の保護の中心になる。
選択肢ごとの確認
「入浴直後に照射部位の観察をしましょう」は、正しい指導とはいえない。入浴の直後は、温まって皮膚が発赤しているため、放射線による変化と区別しにくい。観察は、入浴の前や、時間を空けて明るい場所で行う方が正確になる。日々の変化を比べるためにも、条件をそろえて観察する。
「照射後は照射部位に冷湿布を貼りましょう」は誤りになる。冷湿布には薬剤と粘着剤が含まれ、皮膚への刺激となる。また、粘着剤をはがす際の摩擦が、弱くなった皮膚を傷つける。照射部位には、医師の指示のない外用薬、湿布、テープ類を用いない。
「照射部位の皮膚は乾燥させておきましょう」も誤りになる。乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、亀裂を生じやすく、かゆみも強まる。適度な保湿が推奨され、指示された保湿剤を用いる。塗る時刻については、製品と施設の指示に従う。高エネルギーの外部照射では、通常の使用量で薄く塗った保湿剤が皮膚の線量を臨床的に問題となる程度に変えることは、線量測定の検討では示されていない。ただし塗布量が多い場合や、金属を含む製品は別に扱う。
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混同しやすいポイント
誤肢は、観察の条件、刺激物の使用、そして乾燥という3点で誤っている。放射線皮膚炎のケアは、「こすらない」「刺激しない」「乾かしすぎない」の3つに集約される。日常のあらゆる場面(洗う、拭く、着る、剃る、貼る)を、この原則に照らして判断する。
理解を深める
放射線療法の有害事象は、時期と部位で整理する。急性期(照射中から数週間以内)=皮膚炎、粘膜炎、脱毛、疲労感、そして照射部位ごとの症状。晩期(数か月から数年後)=線維化、萎縮、瘻孔、二次発癌。前立腺への外照射では、直腸と膀胱が近接するため、放射線直腸炎(下痢、粘血便、便意切迫)と放射線膀胱炎(頻尿、排尿時痛、血尿)が生じうる。また、この患者は根治的前立腺摘出術を受けており、術後の尿失禁が残っている可能性もある。骨盤底筋訓練の継続、尿取りパッドの使用と交換、そして皮膚の保護(尿による浸軟を防ぐ)が、放射線皮膚炎の予防とも重なる。看護では、皮膚の観察(発赤、乾燥、落屑、水疱、疼痛の程度)を毎回行い、グレードに応じて対応を変える。強い皮膚炎では治療の一時中断を検討することもあるため、変化を早く把握して医師に伝える。加えて、外来通院での治療では、毎日の通院そのものが負担になる。通院の手段、体調、そして生活の様子を聞き取り、必要な支援につなぐことも看護の役割になる。
間違えやすい考え方
『正しい説明』を問う型で、誤肢が観察の条件・刺激物・乾燥である。摩擦と刺激を避けるという原則で切る。
5分で振り返る
①放射線は基底層の細胞を障害し、皮膚が薄く弱くなる(発赤、乾燥、色素沈着、水疱、潰瘍)。②ケアの原則=こすらない、刺激しない、乾かしすぎない。③洗うときは泡立てて手でやさしく、押さえて水気を取る。④指示のない外用薬・湿布・テープを照射部位に用いない。⑤適度な保湿を行う(塗る時刻は製品と施設の指示に従う。通常量で薄く塗る保湿剤が線量を変えるという根拠はない)。⑥観察は条件をそろえて(入浴直後は発赤と区別しにくい)。⑦前立腺への外照射では放射線直腸炎と膀胱炎も生じうる。
1分チェック
- 照射部位の皮膚は。→ 強くこすらない(摩擦を避ける)。保湿はするが乾燥させない。
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