次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(72歳、男性)は、妻と2人暮らしで子どもはいない。定年後は2人で旅行するのが趣味であった。Aさんは、1か月前から残尿感や夜間頻尿が気になり病院を受診した結果、前立腺癌〈prostatecancer〉と診断され根治的前立腺摘出手術を受けた。退院後は、手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行うことになっている。
A さんの放射線療法が開始され初回の照射を終えた。放射線外来の看護師は、 終了後にA さんへ声をかけた。A さんは「ベッドは硬いし、最後まで同じ姿勢でい ることがとても苦痛です。大きな音がするので恐怖も感じます」と訴えた。 このときの看護師の説明で正しいのはどれか。
公式正答:2
解説
初回の照射後に、ベッドの硬さ、同一体位の維持、大きな音への苦痛と恐怖を訴えた72歳男性への説明を問う。「治療体位をとるための固定具を工夫してみます」である。
この問題で問われていること
治療の条件を保ちながら、苦痛を減らす方法を選べるか。
しくみから理解する
放射線の外照射では、毎回まったく同じ位置に照射する必要がある。位置が数ミリずれても、標的への線量が不足したり、周囲の正常組織へ過剰に当たったりする。そのため、固定具(体幹を支える型、枕、足の固定具など)を用いて体位を再現する。この固定具は、位置の再現のためのものであると同時に、患者が楽に同じ姿勢を保つための道具でもある。硬さや当たり方が苦痛の原因になっているなら、素材、形、支える位置を調整することで、治療の精度を損なわずに苦痛を減らせる。放射線技師と相談して工夫するのが、この場面の対応になる。
選択肢ごとの確認
「照射中は傍に付き添います」ことはできない。照射室の中には、放射線の被曝を避けるため、照射中に人は入らない。患者は一人で室内におり、外からカメラとマイクで観察し、通話できる仕組みになっている。この点を説明し、「見ていること」「声をかけられること」を伝えることが、恐怖への対応になる。
「照射時間を短くできるよう主治医に相談する」ことも適切でない。照射の時間は、必要な線量と装置の条件によって決まり、短くすれば治療の効果が損なわれる。1回の照射時間は数分程度で、位置合わせを含めても10〜20分程度になる。時間を変えるのではなく、その時間を楽に過ごせるようにする。
「照射中に体位変換ができるよう放射線技師に相談する」ことは、治療そのものを成り立たなくする。体位が変われば照射の位置がずれ、標的を外し、周囲の組織を傷つける。照射中は動かないことが前提になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「治療の条件を変える」方向になっている。付き添う、短くする、動く。放射線療法では、位置の再現性と線量が治療の核心であり、それを変えずに苦痛を減らす方法を探すのが看護の役割になる。制約を理解したうえで、その中でできることを提案する、という考え方が要点になる。
理解を深める
放射線療法を受ける患者の苦痛は、身体的なものだけではない。身体=同一体位の維持、硬い治療台、寒さ、皮膚炎、疲労感、部位ごとの症状。心理=閉鎖的な空間での孤独、装置の大きな音、一人にされる不安、放射線そのものへの恐れ、治療の効果への不安。生活=連日の通院、待ち時間、費用、仕事や家庭との両立。それぞれに対応がある。体位の苦痛には、固定具の工夫、薄いパッド(線量に影響しない範囲で)、事前の鎮痛薬、そして体位をとる前に十分に説明して力を抜けるようにすること。音と孤独には、何が起こるかを事前に具体的に説明する、カメラとマイクで常に見守られていることを伝える、声をかけるタイミングを決めておく、そして音楽を流す(施設による)。寒さには、室温の調整と保温。通院の負担には、時間帯の調整、交通手段の相談、家族の支援。初回の治療の後は、体験を聞き取る好機になる。何がつらかったかを具体的に聞き、次回に向けて一つずつ手を打つことで、治療を完遂できる可能性が高まる。放射線療法は数週間にわたって連日続くため、初回の対応が全体の経過を左右する。
間違えやすい考え方
『正しい説明』を問う型で、誤肢がすべて治療の条件を変えるものである。精度を保ったまま苦痛を減らす方向で切る。
5分で振り返る
①外照射では毎回同じ位置に照射する必要があり、固定具で体位を再現する。②固定具は位置の再現と、楽に姿勢を保つことの両方を担う。素材・形・支える位置を調整できる。③照射中は被曝を避けるため室内に人は入らない。カメラとマイクで観察し通話する。④照射時間は必要な線量で決まり、短くすれば効果が損なわれる。⑤照射中に体位を変えれば標的を外し正常組織を傷つける。⑥苦痛は身体・心理・生活の3面で捉える。⑦初回の後に体験を聞き取り、次回に向けて手を打つ。
1分チェック
- 治療体位の苦痛には。→ 固定具を工夫する(位置の再現性を保ったまま楽にする)。
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