神経筋接合部にあるイオンチャネル型受容体にアセチルコリンが結合すると、あ るイオンが筋細胞内に流入する。 このイオンはどれか。
公式正答:4
解説
運動神経の命令が骨格筋に伝わる最後の一歩を問う問題。アセチルコリンが筋細胞側の受容体に結合すると、そこがイオンの通り道として開き、ナトリウムイオンが筋細胞の中へなだれ込む。この流入が終板電位をつくり、活動電位を経て筋収縮につながる。
この問題で問われていること
「イオンチャネル型受容体」=受容体そのものが通り道になっている型。神経筋接合部でこれにあたるのはアセチルコリン受容体で、開いたときに何が入るかを答える。カルシウムイオンも神経筋接合部で重要だが、それは神経終末側の話で筋細胞側ではない。この2か所を区別できているかが問われている。
しくみから理解する
骨格筋終板のニコチン性アセチルコリン受容体は、リガンド作動性の非選択的陽イオンチャネルである。静止膜電位付近ではナトリウム流入とカリウム流出が同時に起こるが、電気化学的駆動力の差により正味の内向き電流となって終板を脱分極させる。受容体サブタイプによってはカルシウム透過性もある。設問では正味の主な流入イオンとしてナトリウムを選ぶ。
選択肢ごとの確認
陰イオンはこのチャネルを通れない。開口部に強い負電荷をもつアミノ酸が並んでいて、同じ負電荷の塩化物イオンははじき返される。大きさを考えるまでもなく落とせる。
カリウムも受容体を通過し得るが、静止膜電位付近では外向き成分であり、正味の終板電流を説明する主な流入イオンではない。
神経筋接合部でカルシウムが流入するのは事実だが、それは神経終末側であって筋細胞側ではない。設問は「イオンチャネル型受容体に」「筋細胞内に」と場所を2重に限定している。
ナトリウムだけが通過する専用チャネルではない。ニコチン性受容体は非選択的陽イオンチャネルで、ナトリウム流入とカリウム流出の差が正味の内向き電流をつくる。
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混同しやすいポイント
カルシウムの出番は3か所ある。①神経終末に入る(アセチルコリンを出させる)②筋小胞体から細胞質へ出る(収縮の引き金)③どちらでもなく、筋細胞膜から入るのはナトリウム。この3点セットで整理すると混乱しない。
理解を深める
この経路のどこを止めるかで薬と病気が説明できる。クラーレ(D-ツボクラリン)は受容体の結合部位を奪い合ってチャネルを開かせない。ボツリヌス毒素は神経終末からの放出そのものを減らす。重症筋無力症は受容体に対する自己抗体が受容体を阻害・破壊する自己免疫疾患で、終板電位が小さくなり筋力が低下する。治療にネオスチグミンなど抗コリンエステラーゼ薬を使うのは、分解を遅らせてシナプス間隙の濃度を上げ、残った受容体を働かせるため。同じ第114回午前の問31が重症筋無力症を扱っており地続きになっている。
間違えやすい考え方
「神経筋接合部+カルシウム」という強い結びつきを利用し、場所を入れ替えて誤答させる型。設問文が場所や主語を細かく限定しているときは、その限定こそが正解の分かれ目になっている。似た型に「シナプス前/シナプス後」「細胞内/細胞外」「流入/流出」の入れ替えがある。
5分で振り返る
①ニコチン性受容体は非選択的陽イオンチャネル。②Na+流入とK+流出が同時に起こる。③静止膜電位では正味の内向き電流となる。④設問の簡略化では主な流入イオンとしてNa+を選ぶ。⑤「Na+しか通らない」と説明しない。
1分チェック
- アセチルコリン受容体が開いたとき筋細胞に流入するイオンは何か
- 塩化物イオンが通れないのはなぜか
- カリウムが通路を通れるのに正味では動かないのはなぜか
- 神経筋接合部でカルシウムが流入するのは神経側か筋側か
- 終板電位はどのくらいの大きさで、次に何を起こすか
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