口渇、多飲、多尿を主訴とする患者が、夜間の排尿が頻回で不眠を訴えている。 1日の尿量は5L ほどで、尿比重は1.005、尿浸透圧は110 mOsm/kg であった。 この症状の原因と考えられるホルモンの内分泌器官はどれか。
公式正答:1
解説
口渇・多飲・多尿があり、1日尿量5L、尿比重1.005、尿浸透圧110mOsm/kgという所見から、原因となるホルモンの内分泌器官を問う。下垂体後葉である。
この問題で問われていること
検査値から病態を特定し、責任ホルモンの産生・分泌部位まで辿れるか。
しくみから理解する
尿量が5Lと多いにもかかわらず、尿比重1.005、尿浸透圧110mOsm/kgと極端に薄い尿が出ている。これは水が再吸収されずにそのまま排泄されていることを示す。腎集合管での水の再吸収は、バソプレシン(抗利尿ホルモン、ADH)がV2受容体に結合し、アクアポリン2を管腔側の細胞膜へ移動させることで行われる。バソプレシンの作用が失われると水が再吸収されず、希釈尿が大量に出る(尿崩症)。バソプレシンは視床下部の視索上核と室傍核で産生され、神経の軸索を通って下垂体後葉へ運ばれ、そこから血中へ分泌される。したがって設問が問う内分泌器官は下垂体後葉である。
選択肢ごとの確認
サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)、カルシトニンを分泌する。機能亢進症では発汗と体重減少がみられるが、希釈尿の多尿は生じない。
インスリンとグルカゴンを分泌する。糖尿病でも口渇・多飲・多尿が生じるが、機序は高血糖による浸透圧利尿であり、尿中に糖が排泄されるため尿比重はむしろ高くなる(1.030以上のこともある)。設問の低比重・低浸透圧は糖尿病を除外する所見になる。
パラソルモンを分泌し、カルシウム代謝を調節する。原発性副甲状腺機能亢進症では高カルシウム血症により多尿と口渇が生じうるが、尿は極端な希釈尿にはならず、設問の値とは合わない。
皮質からコルチゾール、アルドステロン、アンドロゲン、髄質からカテコールアミンを分泌する。原発性アルドステロン症では低カリウム血症により尿濃縮力が低下して多尿を生じることがあるが、設問の著明な希釈尿の第一の原因ではない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
多尿をきたす病態を、尿の濃さで鑑別する点が要点である。尿崩症=薄い尿(低比重・低浸透圧)、糖尿病=浸透圧利尿で尿糖があり比重は高い、心因性多飲=薄い尿だが飲水制限で尿は濃縮される。数値を読まずに『口渇・多飲・多尿=糖尿病』と反射的に答えると誤る。設問が比重と浸透圧をわざわざ示しているのは、そこが鑑別点だからである。
理解を深める
尿崩症には、バソプレシンの分泌が不足する中枢性(下垂体性)と、腎の反応性が低下する腎性がある。中枢性の原因は、下垂体腫瘍、手術、外傷、炎症、自己免疫などで、特発性も多い。診断には水制限試験とバソプレシン負荷試験を用い、中枢性であればバソプレシン投与で尿浸透圧が上昇する。治療はデスモプレシン(バソプレシンのアナログ)の点鼻または経口投与である。看護では、飲水量と尿量の正確な記録、体重測定、電解質(とくにナトリウム)の確認、脱水の徴候の観察を行う。飲水が自由にできない状況(意識障害、術後、高齢者、乳幼児)では急速に高ナトリウム血症と脱水が進行するため、とくに注意が要る。夜間の頻尿による睡眠障害も生活の質に影響するため、服薬のタイミングを含めて相談する。
間違えやすい考え方
検査値から病態と器官を辿る型で、誤肢がすべて内分泌器官である。尿の濃さで鑑別する。
5分で振り返る
①尿崩症=バソプレシン作用不足で水が再吸収されず希釈尿が大量に出る。②尿比重1.005、尿浸透圧110mOsm/kgは著明な希釈尿。③バソプレシンは視床下部で産生され下垂体後葉から分泌される。④糖尿病の多尿は浸透圧利尿で尿比重は高い。⑤中枢性と腎性があり、治療はデスモプレシン。⑥飲水できない状況では高ナトリウム血症と脱水が急速に進む。
1分チェック
- 多尿で尿が極端に薄いとき、責任ホルモンはどこから分泌されるか。→ 下垂体後葉(バソプレシン)。
この問題に対応する教材の確認中です。