同種造血幹細胞移植の前に行われる全身放射線照射の目的はどれか。2つ選べ。
公式正答:2・4
解説
同種造血幹細胞移植の前に行われる全身放射線照射の目的を2つ問う。拒絶反応の防止と、腫瘍細胞の根絶である。
この問題で問われていること
移植前処置が二つの役割を同時に担っていることを理解しているか。
しくみから理解する
同種造血幹細胞移植の前処置は、大量の抗癌薬と全身放射線照射(TBI)を組み合わせて行われ、二つの目的を同時に果たす。第一は、残存する腫瘍細胞を根絶することである。通常の化学療法では到達できない量の治療を加えることで、再発の原因となる細胞を減らす。第二は、患者自身の免疫系を強力に抑制し、ドナーの細胞が拒絶されずに生着できる状態をつくることである。骨髄の空間をあけるという意味でも働く。放射線は薬剤の到達しにくい中枢神経系や精巣にも届くため、この点でも利点がある。
選択肢ごとの確認
逆である。前処置により好中球が著減し、生着までの数週間は極度の易感染状態になる。この時期は無菌室や高性能フィルターを備えた病室で管理し、予防的な抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬を用いる。放射線照射は感染を予防するものではなく、むしろ感染のリスクをつくる。
放射線に抗癌薬を活性化する作用はない。前処置では放射線と抗癌薬を併用するが、これはそれぞれが独立に腫瘍細胞を傷害し、また免疫抑制をかけるためである。
GVHDは、生着したドナーのリンパ球が患者の組織を異物として攻撃する反応である。前処置は患者側の免疫を抑えるものであり、ドナー側のリンパ球による攻撃を防ぐものではない。GVHDの予防には、移植後のカルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)とメトトレキサートなどの免疫抑制薬を用いる。方向が逆である点に注意する。
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混同しやすいポイント
拒絶反応とGVHDの方向を取り違えないことが最大の要点である。拒絶反応=患者の免疫がドナーの細胞を攻撃する(宿主対移植片)。GVHD=ドナーのリンパ球が患者の組織を攻撃する(移植片対宿主)。前処置は患者側の免疫を抑えるので、防げるのは拒絶反応であってGVHDではない。誰が誰を攻撃するのかを図で描いて確認すると定着する。
理解を深める
TBIの急性期の有害事象には、悪心・嘔吐、下痢、口内炎、耳下腺の腫脹と疼痛、皮膚炎、脱毛がある。晩期には、白内障、間質性肺炎、性腺機能低下と不妊、甲状腺機能低下、成長障害(小児)、二次癌がある。とくに小児では成長と生殖機能への影響が大きいため、治療前に妊孕性温存(精子・卵子・卵巣組織の凍結保存)について説明する機会を持つことが求められる。看護では、前処置中の症状マネジメント、口腔ケア、感染予防、輸血の管理、生着までの精神的な支援を行う。生着はおおむね移植後2〜4週で好中球数の回復として確認される。GVHDは皮膚(皮疹)、消化管(下痢)、肝(黄疸)に現れやすく、慢性期には口腔乾燥、眼乾燥、皮膚硬化などを生じる。一方でGVHDには腫瘍細胞を攻撃する効果(移植片対白血病効果)もあり、完全に抑えればよいというものではない点が治療の難しさになる。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢に『GVHDの予防』という方向が逆のものが置かれている。誰が誰を攻撃するかで切る。
5分で振り返る
①前処置=大量化学療法+全身放射線照射。②目的は腫瘍細胞の根絶と患者の免疫抑制(拒絶反応の防止)。③拒絶反応=患者がドナー細胞を攻撃、GVHD=ドナーリンパ球が患者を攻撃。④GVHDの予防は移植後の免疫抑制薬。⑤前処置後は極度の易感染状態、生着は2〜4週。⑥晩期に白内障・不妊・二次癌、妊孕性温存の説明が要る。
1分チェック
- 移植前の全身放射線照射の目的は。→ 腫瘍細胞の根絶と、拒絶反応の防止(患者の免疫抑制)。
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