肝細胞癌〈hepatocellular carcinoma〉で正しいのはどれか。2つ選べ。
公式正答:2・3
解説
肝細胞癌で正しいものを2つ問う。原発性肝癌の中で最も頻度が高いことと、診断に腹部超音波検査が用いられることである。
この問題で問われていること
疾患の疫学、診断法、腫瘍マーカー、発生母地を正確に区別できるか。
しくみから理解する
原発性肝癌のうち、肝細胞から発生する肝細胞癌が大部分(およそ9割)を占める。背景には、B型・C型肝炎ウイルスの持続感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患による慢性の炎症と線維化があり、多くは肝硬変を母地として発生する。診断では、まず腹部超音波検査でスクリーニングを行う。非侵襲的で繰り返し実施でき、慢性肝疾患のある人に対する定期的なサーベイランスの中心になる。ここで結節が疑われれば、造影CT、造影MRI、腫瘍マーカーで確定に進む。
選択肢ごとの確認
早期には症状がほとんど出ない。黄疸は、肝機能が高度に低下した進行例や、胆管の閉塞を伴う場合に現れる。無症状のうちに進行するため、危険因子のある人への定期的なサーベイランス(超音波と腫瘍マーカーを3〜6か月ごと)が重要になる。なお早期から黄疸が出やすいのは胆管系の癌である。
肝細胞癌の腫瘍マーカーはAFP(α-フェトプロテイン)とPIVKA-Ⅱである。CEAは大腸癌をはじめとする消化器癌や肺癌などで上昇する、特異性の低いマーカーで、肝細胞癌の指標にはならない。
それは肝内胆管癌(胆管細胞癌)の説明である。肝細胞癌は肝細胞そのものから発生する。両者はともに原発性肝癌に含まれるが、発生母地、危険因子、腫瘍マーカー、治療方針が異なる。肝内胆管癌ではCA19-9が用いられる。
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混同しやすいポイント
選択肢4と5は、いずれも『別の癌の話』を肝細胞癌の説明として提示する型である。CEA=大腸癌など、AFPとPIVKA-Ⅱ=肝細胞癌、CA19-9=膵癌・胆道癌、CA125=卵巣癌、PSA=前立腺癌、という腫瘍マーカーの対応表を持っておくと、この種の誤肢を確実に落とせる。
理解を深める
治療は、肝機能(Child-Pugh分類)、腫瘍の数と大きさ、脈管侵襲、遠隔転移によって選択される。肝切除、ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法、肝移植がある。看護では、背景に肝硬変があることが多いため、その合併症(食道静脈瘤、肝性脳症、腹水、易出血性)の観察と管理が重要になる。TACE後は、発熱、腹痛、悪心といった塞栓後症候群が生じる。肝性脳症では、羽ばたき振戦、傾眠、性格の変化を観察し、蛋白質の過剰摂取と便秘を避ける。B型・C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス療法の進歩により、C型肝炎からの発癌は減少しつつあるが、脂肪性肝疾患を背景とする発癌が相対的に増えている。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢が症状の時期、腫瘍マーカーの取り違え、別の癌の定義で構成されている。マーカーの対応表で切る。
5分で振り返る
①肝細胞癌は原発性肝癌の約9割を占める。②多くは肝炎ウイルス・アルコール・脂肪性肝疾患による肝硬変を母地とする。③スクリーニングは腹部超音波、3〜6か月ごとのサーベイランス。④腫瘍マーカーはAFPとPIVKA-Ⅱ(CEAではない)。⑤肝内胆管癌は別の癌でCA19-9。⑥早期は無症状、黄疸は進行例。
1分チェック
- 肝細胞癌のスクリーニングに用いるのは何か。→ 腹部超音波検査(腫瘍マーカーはAFPとPIVKA-Ⅱ)。
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