片側性の末梢性顔面神経麻痺 peripheral facial palsy の症状はどれか。2つ選べ。
公式正答:3・5
解説
片側性の末梢性顔面神経麻痺の症状を2つ問う。口角が垂れ下がることと、額にできるしわに左右差があることである。
この問題で問われていること
顔面神経の支配領域を理解し、中枢性との違いを額の動きで判別できるか。
しくみから理解する
顔面神経(第Ⅶ脳神経)は顔面表情筋を支配する運動神経である。末梢(核または核より末梢)の障害では、その側の顔面表情筋すべてが麻痺するため、額のしわ寄せができなくなり、眼を閉じられず、鼻唇溝が浅くなり、口角が下がる。額の運動を支配する神経核の上位ニューロンは両側の大脳皮質から入力を受けているため、中枢性(大脳の障害)では額の動きが保たれ、口元だけが麻痺する。したがって『額のしわ寄せができるかどうか』が、中枢性と末梢性を分ける決定的な所見になる。
選択肢ごとの確認
眼瞼下垂は、上眼瞼挙筋を支配する動眼神経(第Ⅲ脳神経)の麻痺、あるいはミュラー筋を支配する交感神経の障害(Horner症候群)、重症筋無力症で生じる。顔面神経が支配するのは眼を閉じる眼輪筋であり、その麻痺では眼が閉じられなくなる(兎眼)。開かなくなるのではなく閉じられなくなる、という方向が逆である。
顔面の知覚は三叉神経(第Ⅴ脳神経)が担う。顔面神経は運動が主体で、ほかに舌の前3分の2の味覚、涙腺と唾液腺の分泌、アブミ骨筋の支配を持つが、顔面の皮膚知覚は含まない。
複視は眼球運動の障害で生じ、動眼神経、滑車神経、外転神経の麻痺による。顔面神経は眼球を動かさない。
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混同しやすいポイント
額で切る、と一言で覚える。額のしわ寄せができない=末梢性、できる=中枢性。末梢性の代表はBell麻痺とRamsay Hunt症候群、中枢性の代表は脳梗塞である。また『眼が閉じられない』のであって『眼が開かない』のではない点も、方向を取り違えやすいので確認しておく。
理解を深める
末梢性顔面神経麻痺では、閉眼できないことから角膜が乾燥し、角膜炎や角膜潰瘍を起こす危険がある。人工涙液の点眼、眼軟膏、就寝時のテーピングやアイパッチによる保護が重要な看護になる。ほかに、口角から食物や飲み物がこぼれる、頬の内側に食物が溜まる、構音が不明瞭になる、味覚が障害される、音が響いて聞こえる(聴覚過敏)といった症状が現れる。Bell麻痺は特発性で、単純ヘルペスウイルスの再活性化が関与するとされ、副腎皮質ステロイドと抗ウイルス薬で治療する。Ramsay Hunt症候群は水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によるもので、耳介の水疱と耳痛、めまいや難聴を伴い、予後はBell麻痺より不良である。顔の変化は外見に直結するため、心理的な負担が大きい。回復の見通しを伝え、表情筋のマッサージや訓練を指導する際にも、過度な自己流の運動が病的共同運動を招くことがあるため、専門職の指示に沿って行う。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢が別の脳神経の症状で構成されている。顔面神経が何を支配するかで切る。
5分で振り返る
①末梢性は同側の顔面表情筋すべてが麻痺し、額のしわ寄せができない。②中枢性は額の動きが保たれる(両側支配のため)。③顔面神経は眼輪筋を支配、麻痺で閉眼できない(兎眼)。④眼瞼下垂は動眼神経、顔面の知覚は三叉神経、複視は眼球運動神経。⑤角膜保護が最優先の看護。⑥Bell麻痺は特発性、Ramsay Hunt症候群は帯状疱疹ウイルスで予後不良。
1分チェック
- 末梢性顔面神経麻痺の決め手は。→ 額のしわ寄せができない(中枢性では保たれる)。
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