次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(73歳、女性)は1人で暮らしており、脳梗塞〈cerebralinfarction〉で入院した。Aさんは左半身に麻痺があり、認知機能障害はない。4点杖を使用して歩行が可能となり、住宅改修をして自宅に退院した。退院後は、降圧薬と抗血栓薬が処方され、服薬管理と健康管理の目的で訪問看護を週1回、調理と買い物代行の目的で訪問介護を週1回利用している。Aさんは「昨日、退院して初めて1人で買い物に行ったら転びそうになって、横にいた人に支えてもらったんです」と訪問看護師に話した。
このとき、訪問看護師が転倒予防のために収集する情報として最も適切なのはど れか。
公式正答:3
解説
左半身麻痺のある73歳女性が、退院後に初めて一人で買い物へ行き転びそうになったと話した場面で、転倒予防のために収集する情報を問う。右上下肢の筋力である。
この問題で問われていること
麻痺のある人の歩行を、どこが支えているかという観点で考えられるか。
しくみから理解する
左半身に麻痺があるということは、体を支える役割の大部分を右側(健側)が担っているということである。4点杖も右手で持ち、右上肢で体重の一部を支え、右下肢で立位と歩行を保っている。したがって、右上下肢の筋力が低下すれば、支持基盤そのものが崩れ、転倒に直結する。入院中の活動量の低下や、退院後の生活の変化によって健側の筋力も落ちうるため、ここを評価することが転倒予防の中心になる。麻痺側だけでなく健側を見る、という視点がこの設問の要になる。
選択肢ごとの確認
服薬の状況は重要な情報である。降圧薬による起立性低血圧はふらつきと転倒の原因になり、抗血栓薬は転倒したときの出血のリスクを高める。ただし『転びそうになった』という出来事から、まず評価すべきは歩行を支えている身体の機能であり、優先度では健側の筋力が上回る。
食事の摂取量も、低栄養による筋力低下やふらつきにつながるため無関係ではない。しかし転倒予防の情報として直接的ではない。
他者との交流の頻度は、閉じこもりや意欲の低下を評価するうえで意味を持つが、転倒の直接的な要因ではない。この事例では、むしろ一人で買い物に出かけるという活動的な様子がうかがえる。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも、在宅療養者のアセスメントとして必要な項目である。判断の軸は『転倒予防のために』という限定と、『左半身麻痺』という条件の組み合わせにある。麻痺のある人では、健側が身体を支えているという構図を思い描けば、右上下肢の筋力が答えだと分かる。麻痺側にばかり注目すると、この視点を見落とす。
理解を深める
在宅での転倒予防は、身体・薬剤・環境・行動の4つの側面から評価する。身体では、筋力(とくに健側と下肢)、バランス、立ち上がり動作、視力、めまい、疲労。薬剤では、降圧薬、利尿薬、睡眠薬、抗不安薬、複数の薬の併用。環境では、段差、敷物、コード類、照明、手すり、床の滑り、屋外の路面と人混み。行動では、履物、荷物の持ち方、急ぐ場面、夜間のトイレ。この事例では、住宅改修が行われており屋内は整えられているが、屋外の買い物という新しい場面でヒヤリとしている。屋内で安全でも屋外は条件が異なるため、実際の外出経路を一緒に確認することも有効になる。また、抗血栓薬を服用しているため、転倒時には頭部外傷から慢性硬膜下血腫や頭蓋内出血に至る危険があり、転倒後に頭を打った場合は症状がなくても受診するよう伝えておく。転倒への不安から外出を控えると、活動量が減って筋力がさらに落ちるという悪循環に陥るため、安全に外出を続けられる方法を一緒に考える姿勢が要る。
間違えやすい考え方
『最も適切な情報』を問う型で、誤肢もすべて必要な情報である。条件(麻痺側と健側)と目的(転倒予防)の組み合わせで切る。
5分で振り返る
①麻痺のある人では健側が体重を支えている。健側の筋力低下が転倒に直結する。②評価は身体・薬剤・環境・行動の4側面。③降圧薬は起立性低血圧、抗血栓薬は転倒時の出血リスク。④屋内が安全でも屋外は条件が違う。⑤抗血栓薬服用中の頭部打撲は症状がなくても受診。⑥転倒への不安から外出を控えると筋力がさらに落ちる。
1分チェック
- 左片麻痺の人の転倒予防で、まず何を評価するか。→ 健側(右)上下肢の筋力(身体を支えている側)。
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