次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(73歳、女性)は1人で暮らしており、脳梗塞〈cerebralinfarction〉で入院した。Aさんは左半身に麻痺があり、認知機能障害はない。4点杖を使用して歩行が可能となり、住宅改修をして自宅に退院した。退院後は、降圧薬と抗血栓薬が処方され、服薬管理と健康管理の目的で訪問看護を週1回、調理と買い物代行の目的で訪問介護を週1回利用している。Aさんは「昨日、退院して初めて1人で買い物に行ったら転びそうになって、横にいた人に支えてもらったんです」と訪問看護師に話した。
退院から3か月後、A さんはテレビを見て過ごす時間が多くなった。「買い物や 調理が面倒になって、同じものばかり作っています」と言い「退院したころは毎日排 便があったのに、最近便秘気味ですっきりしないんです」と訴えた。 訪問看護師の対応で最も適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
退院3か月後、テレビを見て過ごす時間が増え「買い物や調理が面倒で同じものばかり作っている」「最近便秘気味」と訴えた場面での対応を問う。食事内容を見直すことである。
この問題で問われていること
訴えの背景にある原因を設問文から読み取り、そこに働きかけられるか。
しくみから理解する
設問文には便秘の原因が明示されている。買い物と調理が面倒になり、同じものばかり作っているという記述は、食事の内容が偏り、食物繊維と水分の摂取が減っていることを示す。加えて、テレビを見て過ごす時間が増えたという記述は、活動量の低下を示し、これも腸蠕動を鈍らせる。便秘は結果であって、原因は食事と活動にある。したがって、まず食事内容を見直し、そこから改善を図るのが順序になる。原因に働きかけずに対症的な方法を先に選ぶと、根本は変わらない。
選択肢ごとの確認
腹部の温罨法は、腸蠕動を促す方法として用いられる。ただし対症的な対応であり、原因である食事の偏りを改めなければ繰り返す。また高齢者では皮膚が薄く感覚も鈍いため、低温熱傷に注意が要る。
市販の浣腸液の使用は、より侵襲的で、習慣化すると自然な排便反射が失われる。高齢者では、直腸穿孔や、いきみによる血圧上昇のリスクもある。脳梗塞の既往があり抗血栓薬を服用している人では、なおさら慎重になる。まず試みる方法ではない。
緩下薬の処方を相談することも選択肢だが、生活の見直しを試みる前に薬に頼るのは順序が逆になる。刺激性下剤の連用は耐性と腸管の機能低下を招く。まず食事と活動を整え、それでも改善しなければ薬物療法を検討する。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも便秘への対応として実際に行われるものであり、間違いではない。判断の軸は順序にある。原因が設問文に明示されているのだから、そこに働きかけるのが最初になる。この型では、設問文の中の『なぜそうなったか』を示す記述を読み落とさないことが要点になる。
理解を深める
食事の見直しでは、食物繊維(野菜、果物、海藻、豆類、穀類)と水分の摂取を増やす。ただし、買い物と調理が面倒だという背景があるため、実行できる方法を一緒に考える必要がある。訪問介護で買い物代行と調理を利用しているのだから、その内容を相談する、常備できる食品(缶詰、冷凍野菜、乾物、ヨーグルト)を活用する、配食サービスを検討する、といった具体策が挙がる。あわせて、活動量を増やす工夫(散歩、体操、家事の中での動き)、規則正しい食事の時刻、朝食後の排便習慣(胃結腸反射を利用する)、腹部のマッサージ、無理のない排便姿勢(前傾で足台を使う)も伝える。この事例では、「面倒になった」という言葉の背景に、意欲の低下や抑うつが隠れていないかも見る必要がある。退院後3か月という時期は、生活が落ち着く一方で、できないことへの落胆や孤立が表面化しやすい。便秘という身体の訴えから、生活全体の変化に気づき、必要なら他のサービスや支援につなぐ視点が求められる。
間違えやすい考え方
『最も適切な対応』を問う型で、誤肢がすべて便秘への対応として実在する。設問文が示す原因と、対応の順序で切る。
5分で振り返る
①設問文に原因が書かれている(調理が面倒で同じものばかり、活動量の低下)。②まず食事内容(食物繊維と水分)と活動を見直す。③温罨法・浣腸・下剤は対症的で、順序としては後になる。④浣腸の習慣化は排便反射を失わせ、いきみは血圧を上げる。⑤実行できる方法を一緒に考える(訪問介護、常備食品、配食)。⑥朝食後の排便習慣と前傾姿勢+足台。⑦「面倒になった」の背景に意欲低下や抑うつがないか見る。
1分チェック
- 便秘の訴えにまず何をするか。→ 原因(食事の偏りと活動量の低下)に働きかける。食事内容の見直しから。
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