次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(56歳、女性、主婦)は、食後に冷汗を伴う腹痛があり外来を受診した。腹部超音波検査の結果、胆石症〈cholelithiasis〉と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術の目的で入院した。看護師は手術オリエンテーションで、術後の入院期間は2日と説明した。Aさんは、同じ手術を受けた妹が合併症で3週間以上食事もできなかったので、自分も同じ合併症を発症するかもしれないと心配そうに話した。
A さんの妹が発症した合併症はどれか。
公式正答:2
解説
腹腔鏡下胆囊摘出術を受けた妹が、合併症で3週間以上食事もできなかったという情報から、その合併症を問う。胆汁瘻である。
この問題で問われていること
術式に特有の合併症を、経過(長期間の絶食)と結びつけて導けるか。
しくみから理解する
胆囊摘出術では、胆囊管を切離してクリップで閉鎖する。この閉鎖が不完全であったり、副肝管や胆管を損傷したりすると、胆汁が腹腔内へ漏れ出す。これが胆汁瘻である。漏れた胆汁は腹膜を強く刺激して胆汁性腹膜炎を起こし、腹痛、発熱、腹膜刺激症状をきたす。治療として、ドレナージを行い、瘻孔が閉じるまで絶食として消化管を安静に保つ必要があるため、食事の再開が長期に及ぶ。3週間以上食事ができなかったという経過は、この病態とよく合致する。
選択肢ごとの確認
肺炎は全身麻酔下の手術後に起こりうる合併症だが、食事が3週間以上できなくなる直接の理由にはならない。呼吸器合併症では、酸素投与や抗菌薬による治療を行いながら、食事は通常どおり進められることが多い。
皮下気腫は、気腹に用いた二酸化炭素が皮下組織へ漏れることで生じる。腹腔鏡手術に特有の合併症だが、多くは自然に吸収され、食事に影響しない。頸部や胸部にまで及ぶと呼吸への影響を考慮するが、長期の絶食を要する病態ではない。
深部静脈血栓症は、手術と臥床により生じる合併症で、肺血栓塞栓症に至れば重篤になる。しかし治療は抗凝固療法であり、食事を長期に止める必要はない。
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混同しやすいポイント
『3週間以上食事もできなかった』という記述が、鑑別の決め手になる。長期の絶食を要するのは、消化管や胆道系の漏れがある場合である。他の3つの合併症は、いずれも実際に起こりうるが、食事を長期に止める理由にならない。事例文の中の、一見すると背景説明に見える記述が、実は答えを決める条件になっている型である。
理解を深める
腹腔鏡下胆囊摘出術は、開腹手術に比べて創が小さく、疼痛が少なく、回復が早いため、標準的な術式になっている。この事例でも術後の入院期間は2日と説明されている。合併症としては、胆汁瘻のほかに、総胆管損傷、出血、気腹に伴う皮下気腫と高炭酸ガス血症、二酸化炭素の横隔膜刺激による術後の肩の痛み(放散痛)、まれに開腹手術への移行がある。看護では、術後のドレーン排液の性状(胆汁様の黄色から緑色の排液は胆汁瘻を疑う)、腹痛、発熱、黄疸、腹部の膨満を観察する。この事例の患者は、妹の経験から強い不安を抱いている。不安に対しては、「大丈夫」と根拠なく打ち消すのではなく、どのようなことが心配なのかを聴き、起こりうることと、その場合にどう対応するかを具体的に伝えることが、安心につながる。同じ手術でも経過は人によって異なるという事実も、根拠を示して伝える。
間違えやすい考え方
事例から合併症を推定する型で、誤肢がすべて実際に起こりうる合併症である。『長期の絶食を要するか』という条件で切る。
5分で振り返る
①胆汁瘻=胆囊管の閉鎖不全や胆管損傷で胆汁が腹腔内へ漏れる。②胆汁性腹膜炎を起こし、ドレナージと絶食で長期化する。③皮下気腫は気腹の二酸化炭素によるもので自然に吸収される。④肺炎・深部静脈血栓症は長期の絶食を要しない。⑤術後は排液の性状(胆汁様)、腹痛、発熱、黄疸を観察。⑥二酸化炭素の横隔膜刺激で術後に肩が痛むことがある。
1分チェック
- 胆囊摘出術後に長期の絶食を要する合併症は。→ 胆汁瘻(胆汁の漏れ、胆汁性腹膜炎)。
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