次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(56歳、女性、主婦)は、食後に冷汗を伴う腹痛があり外来を受診した。腹部超音波検査の結果、胆石症〈cholelithiasis〉と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術の目的で入院した。看護師は手術オリエンテーションで、術後の入院期間は2日と説明した。Aさんは、同じ手術を受けた妹が合併症で3週間以上食事もできなかったので、自分も同じ合併症を発症するかもしれないと心配そうに話した。
A さんの術後の経過は良好で、退院した。その後の外来受診で「下痢をすること が多いです」という訴えがあった。 下痢を予防するために控えるもので正しいのはどれか。
公式正答:2
解説
胆囊摘出術後の外来で「下痢をすることが多い」という訴えがあった場合、下痢の予防のために控えるものを問う。脂質である。
この問題で問われていること
胆囊の機能を理解し、それを失った後に何が起こるかを導けるか。
しくみから理解する
胆嚢摘出後は胆嚢での貯留・濃縮がなくなり、胆汁が持続的に十二指腸へ流れる。回腸で再吸収しきれない胆汁酸が大腸へ達すると、水分・電解質分泌と運動が促進され、胆汁酸性下痢を生じることがある。「胆汁不足で脂肪が消化できないこと」が主因とは限らない。
選択肢ごとの確認
塩分は、高血圧や心不全、腎疾患では制限の対象になるが、胆囊摘出後の下痢とは関わらない。
糖質の消化には胆汁を必要としない。膵アミラーゼと小腸の二糖類分解酵素で消化される。ただし乳糖不耐症では乳製品で下痢を生じるため、原因の鑑別としては考慮する。
蛋白質の消化も胆汁を必要としない。胃のペプシンと膵トリプシン、キモトリプシンなどによる。術後の回復には十分な蛋白質が必要であり、制限すべきものではない。
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混同しやすいポイント
胆汁の役割が『脂肪の消化を助けること』であるという一点から導ける。三大栄養素のうち、胆汁が関わるのは脂質だけである。糖質と蛋白質は膵酵素と消化管の酵素で処理されるため、胆囊の有無に影響されない。設問は消化生理の基本を、術後の生活指導という形で問うている。
理解を深める
術後の下痢は多くが軽快するが、持続する場合は胆汁酸性下痢を含めて評価する。食事は症状に応じて脂肪量や一回量を調整し、極端な長期脂肪制限を一律に勧めない。持続例では医師が胆汁酸吸着薬などを検討する。発熱、黄疸、白色便、強い腹痛は別の合併症を疑う。
間違えやすい考え方
術後の生活指導を問う型で、誤肢が他の栄養素と塩分である。胆汁の役割(脂肪の消化)から導く。
5分で振り返る
①胆嚢摘出後は胆汁が持続的に腸へ流れる。②大腸へ過剰に達した胆汁酸が分泌性下痢を起こし得る。③主因を胆汁不足・脂肪消化不良だけで説明しない。④食事調整は症状に応じる。⑤持続例は胆汁酸性下痢を評価し、黄疸・発熱・強い腹痛は受診する。
1分チェック
- 胆囊摘出後に控えるものは。→ 脂質(胆汁の役割は脂肪の消化を助けること)。
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