次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(50歳、女性、会社員)は、職場で激しい頭痛を訴えて倒れ、意識を失って、救急搬送された。救命救急センター到着時のバイタルサインは、体温36.7℃、呼吸数20/分、脈拍88/分、血圧168/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(roomair)であった。閉眼していたので、大声で話しかけると開眼したが、すぐに閉眼して眠り込んでしまう。
A さんは、CT 検査の結果、脳動脈瘤〈cerebral aneurysm〉の破裂によるくも膜下出血〈subarachnoid hemorrhage〉と診断され、ク リッピング術を受けてICU に入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8 ℃、 呼吸数22/分、脈拍78/分、血圧126/60 mmHg、フェイスマスクによる酸素投与 下(5L/分)で経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98 %であった。3時間後、A さんは 開眼して「頭が痛い」と訴えた。バイタルサインに変化はなく、脳槽ドレーンからは 淡血性の排液がみられている。 このときの看護師の判断で正しいのはどれか。
公式正答:3
解説
くも膜下出血に対するクリッピング術後、ICU入室3時間後に開眼して「頭が痛い」と訴え、バイタルサインに変化がなく、脳槽ドレーンから淡血性の排液がみられる場面での判断を問う。鎮痛薬の適応であることである。
この問題で問われていること
術後の頭痛を、危険な徴候と区別したうえで、疼痛管理の必要性を判断できるか。
しくみから理解する
この場面の所見を確認する。開眼して意思を伝えられており意識レベルは保たれている。バイタルサインに変化がなく、血圧上昇や徐脈といったクッシング現象はない。脳槽ドレーンからの排液は淡血性で、術後として想定される性状であり、急な鮮血の増加はない。つまり再出血や頭蓋内圧亢進を示す所見がない。この状況での頭痛は、開頭術と、くも膜下腔に存在する血液による髄膜刺激に伴う術後の痛みと考えられる。そして、くも膜下出血の術後では、痛みによる血圧上昇そのものが再出血の危険因子になるため、疼痛管理は積極的に行うべき治療になる。我慢させることは有害である。
選択肢ごとの確認
端座位にする理由がない。術後急性期にICUで管理されている状態であり、頭痛への対応として体位を大きく変えることは適切でない。また急な体位変換は循環動態とドレーンの管理に影響する。
枕を高くするのは、頭部を挙上して静脈還流を促す意図と読めるが、頸部が屈曲すると逆に静脈還流を妨げて頭蓋内圧を上げる。頭部の挙上はベッドごと15〜30度で行い、頸部が屈曲しないようにする。枕で頭だけを高くするのは適切な方法ではない。
ドレーンのクランプは、医師の指示なく看護師が判断して行うものではない。脳槽ドレーンは、頭蓋内圧と排液量を管理するために設定された高さで開放されている。不用意なクランプは頭蓋内圧の上昇を招き、逆に過剰な排液は脳の虚脱や硬膜下血腫を招く。移動時など決められた場面以外では操作しない。
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混同しやすいポイント
『痛みを我慢させない』という原則が、この事例では治療上の意味も持つ点が要点になる。くも膜下出血の術後では、血圧の上昇を避けることが再出血の予防に直結し、疼痛はその最大の要因の一つになる。誤肢は、体位の操作とドレーンの操作という、いずれも看護師が独断で行うべきでないこと、あるいは根拠のないことで構成されている。まず所見から危険な徴候の有無を確認し、危険がなければ症状を緩和する、という順序で考える。
理解を深める
くも膜下出血の術後では、3つの合併症を時期とともに押さえる。再出血は発症直後から24時間以内が最も多く、血圧の管理と安静、鎮痛、鎮静が予防になる。脳血管攣縮は発症後4〜14日頃に起こり、血管が縮んで脳虚血をきたし、意識レベルの低下や麻痺が出現する。治療は循環血液量の維持と薬物療法で、この時期の神経所見の変化を見逃さないことが看護の要になる。正常圧水頭症は発症後数週間から数か月に現れ、髄液の吸収障害により生じる。看護では、意識レベル、瞳孔、麻痺、頭痛の程度と性質、バイタルサイン、ドレーンの排液量と性状と拍動、電解質(低ナトリウム血症を起こしやすい)を継続して観察する。刺激を避けた静かな環境を保ち、便秘による怒責を防ぐことも血圧管理の一部になる。
間違えやすい考え方
術後の場面判断を問う型で、誤肢が根拠のない体位変更と独断のドレーン操作で構成されている。所見から危険の有無を確認して切る。
5分で振り返る
①まず危険な徴候(意識レベル低下、クッシング現象、鮮血の排液増加)の有無を確認する。②なければ術後の頭痛として鎮痛する。③くも膜下出血の術後では痛みによる血圧上昇が再出血の危険因子。④頭部挙上はベッドごと15〜30度、頸部を屈曲させない。⑤ドレーンのクランプは指示なく行わない。⑥合併症の時期=再出血は24時間以内、脳血管攣縮は4〜14日、正常圧水頭症は数週〜数か月。
1分チェック
- 術後の頭痛でバイタル安定・排液も想定内なら。→ 鎮痛薬の適応(痛みによる血圧上昇は再出血の危険因子)。
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