次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(1歳4か月、女児)は、午前9時ころ、ポータブル型のゲーム機用の直径10mmのボタン型電池を誤飲し、午前10時に両親に付き添われ外来を受診した。看護師がAちゃんを観察すると、機嫌は良くバイタルサインも安定していた。Aちゃんに成長や発達の遅れはない。待合室にはAちゃんの他に3人の患児が診察を待っていた。それぞれは以下のとおりである。B君(1歳3か月、男児):今朝、カーペットの敷かれたフロアで歩行中に転倒。バイタルサインは正常、顔色良好。母親に抱っこされて遊んでいる。Cちゃん(3歳、女児):体温39.5℃、呼吸数23/分、脈拍100/分、鼻汁多量、機嫌良好、顔色良好。D君(9か月、男児):自宅で痙攣したため受診。初めての痙攣で、5分間継続したが、受診時には止まっている。待合室にて3回の嘔吐。体温38.7℃。声かけで開眼するが、すぐにうとうとする。
このときの看護師のトリアージで診察を受ける優先度が高いのはどれか。
公式正答:4
解説
ボタン型電池を誤飲した1歳4か月児を含む4人の待機患児のなかで、診察の優先度が高い者を問う。痙攣後で3回嘔吐し、声かけで開眼するがすぐうとうとするD君(9か月)である。
この問題で問われていること
緊急度を、生命に直結する徴候の有無で判断できるか。
しくみから理解する
D君の所見を確認する。初めての痙攣が5分間持続した、待合室で3回嘔吐している、声かけで開眼するがすぐうとうとする(意識レベルの低下が持続している)、体温38.7℃。痙攣後のもうろう状態は通常数分から30分程度で回復するが、意識の回復が遅れ、繰り返す嘔吐を伴う場合は、頭蓋内圧亢進、髄膜炎・脳炎、代謝異常、頭部外傷など、生命に関わる病態を考えなければならない。9か月という月齢では髄膜炎の頻度も高い。意識障害は、緊急度を判断する最も重要な指標であり、この4人のなかで唯一、生命に直結する徴候を持っている。
選択肢ごとの確認
Aちゃんは、直径10mmのボタン型電池を誤飲しており、放置すれば消化管の穿孔に至る危険がある重要な症例である。ただし現時点で機嫌は良くバイタルサインも安定しており、意識は保たれている。緊急度としてはD君に次ぐ位置になる。なお食道に停滞している場合は数時間で粘膜障害が進むため、より緊急性が高くなる。
B君は、カーペットの敷かれたフロアで歩行中に転倒したもので、バイタルサインは正常、顔色良好、母親に抱っこされて遊んでいる。受傷機転が軽微で、活気があり、緊急性は低い。
Cちゃんは、体温39.5℃と高熱があるが、呼吸数23/分、脈拍100/分と3歳としては安定しており、鼻汁が多量で機嫌も顔色も良好である。発熱の数値そのものは緊急度を決めない。上気道炎が疑われ、緊急性は低い。
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混同しやすいポイント
『体温が最も高い子』を選ばないことが要点になる。緊急度は、数値の高さではなく、生命の維持に関わる機能(意識、呼吸、循環)の異常で判断する。小児では、機嫌、活気、顔色、哺乳や食事の状況、視線が合うかといった全体の様子が、数値以上に重要な情報になる。Cちゃんは39.5℃でも機嫌が良く、D君は38.7℃でも意識が保てていない。この対比が設問の作りになっている。
理解を深める
小児の初期評価では、外観(意識、筋緊張、視線、啼泣の様子)、呼吸(努力呼吸、呼吸数、異常な音)、循環(皮膚色、末梢の冷感、毛細血管再充満時間)の3つの側面から、短時間で緊急度を判断する。ボタン型電池の誤飲は、小児の誤飲のなかでも特に危険なもので、電池から流れる電流により組織がアルカリ性となって腐食し、粘膜の壊死と穿孔を起こす。食道に停滞している場合は数時間で重篤な障害を生じるため、緊急に内視鏡で摘出する。胃内にあれば経過を見ることもあるが、大型のものや症状のある場合は摘出する。牛乳や水を飲ませて吐かせることは、かえって害になるため行わない。痙攣を伴う小児では、痙攣の持続時間、左右差の有無、痙攣後の意識の回復、発熱の有無、発達の状況を確認する。熱性痙攣は生後6か月から5歳頃に多く、多くは5分以内に止まり予後は良好だが、5分以上続く、繰り返す、意識の回復が悪い、麻痺があるといった場合は、熱性痙攣以外の原因を考える。
間違えやすい考え方
トリアージを問う型で、誤肢に『数値が最も高い』症例が置かれている。生命維持機能(意識・呼吸・循環)の異常で切る。
5分で振り返る
①緊急度は意識・呼吸・循環の異常で判断する。体温の数値ではない。②痙攣後の意識回復の遅れ+繰り返す嘔吐は頭蓋内圧亢進や髄膜炎を疑う。③小児では機嫌・活気・顔色・視線が重要な情報。④ボタン型電池は電流でアルカリ性となり腐食する。食道停滞は数時間で穿孔しうる。⑤吐かせない、牛乳を飲ませない。⑥熱性痙攣は6か月〜5歳、5分以上続く・繰り返す・意識の回復が悪い場合は別の原因を考える。
1分チェック
- 小児のトリアージで最優先になるのは。→ 意識レベルの低下(数値の高い発熱ではない)。
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