次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。
A さんへの活動に関する助言で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
41歳初妊婦が、夫から高齢妊娠だから安静にするよう言われ、なるべく動かないようにしていると話した場面での助言を問う。「ウォーキングを再開しましょう」である。
この問題で問われていること
妊娠中の運動の適否を、経過と運動の種類から判断できるか。
しくみから理解する
この妊婦は妊娠16週3日で、健康診査で順調な経過と診断されている。切迫流早産や妊娠高血圧症候群といった安静を要する所見はない。妊娠中の適度な運動は、体重の管理、便秘の予防、腰痛の軽減、気分の安定、妊娠糖尿病の予防に有効とされ、経過が順調であれば推奨される。ウォーキングは、有酸素運動で強度の調整がしやすく、転倒や腹部への衝撃のリスクが低い。妊娠前から夫と毎日行っていた習慣であり、再開しやすく継続もしやすい。年齢が高いことだけを理由に活動を制限する根拠はない。
選択肢ごとの確認
仕事を辞める必要はない。順調な経過であり、就労の継続は本人の希望と職場の状況によって決めることである。妊娠中の女性労働者には、男女雇用機会均等法による健康診査の時間の確保と医師の指導に基づく措置、労働基準法による危険有害業務の制限、時間外・深夜業の制限といった保護がある。体調に応じて働き方を調整する道があり、退職を勧める場面ではない。
バスケットボールは、接触があり、急な方向転換とジャンプを伴う競技で、転倒と腹部への衝撃の危険がある。妊娠中は避けるべき運動にあたる。他に、スキー、乗馬、格闘技、スキューバダイビング(減圧症の危険)なども避ける。
必要のない安静は害になる。長期の安静は、深部静脈血栓症、筋力低下、便秘、体重の増加、気分の落ち込みを招く。妊娠中の血液は凝固しやすい状態にあるため、血栓のリスクはとくに問題になる。医学的な適応のない安静を続ける理由はない。
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混同しやすいポイント
『高齢妊娠だから安静』という思い込みが、この事例の問題になっている。年齢は、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、染色体異常、帝王切開の頻度が高まるという意味でリスク因子だが、それは丁寧に経過を見る理由であって、活動を止める理由ではない。むしろ不活動は別のリスクを生む。誤肢はいずれも『動かない方向』か『危険な運動』であり、適切な中間を選ぶ形になっている。
理解を深める
妊娠中の運動の目安は、中等度の有酸素運動を週に150分程度、ウォーキング、水泳、マタニティビクス、ヨガなどが勧められる。避けるべきは、転倒や接触の危険がある種目、腹臥位や仰臥位を長く続ける姿勢(仰臥位低血圧症候群)、高地や高温環境での運動、息を止めていきむ動作である。中止すべき徴候として、性器出血、腹痛や規則的な子宮収縮、破水、めまい、頭痛、胸痛、呼吸困難、胎動の減少を伝える。運動を控えるべき状態には、切迫流早産、前置胎盤、頸管無力症、妊娠高血圧症候群、多胎妊娠(種類による)、重篤な心疾患や肺疾患がある。この事例では、夫が心配して家事を引き受けているという状況もある。夫の気遣い自体は否定せず、順調な経過であることと、適度な活動の意義を、夫を含めて共有することが有効になる。妊婦本人が「安静にすべきだ」と言われて動けずにいる状況は、本人の不安にもつながっている。
間違えやすい考え方
『適切な助言』を問う型で、誤肢が不活動の方向と危険な運動である。経過(順調)と運動の種類で切る。
5分で振り返る
①経過が順調なら適度な運動は推奨される(体重管理、便秘、腰痛、気分、妊娠糖尿病の予防)。②ウォーキング・水泳・ヨガなど、週150分程度の中等度の有酸素運動。③避けるのは転倒や接触のある種目、長い仰臥位、高温環境、いきむ動作。④年齢だけを理由に活動を制限しない。⑤不要な安静は血栓症・筋力低下・便秘・抑うつを招く。⑥中止の徴候=出血・腹痛・破水・めまい・胎動減少。⑦就労には法律上の保護がある。
1分チェック
- 順調な経過の妊婦に勧める運動は。→ ウォーキングなどの有酸素運動(年齢だけを理由に安静にしない)。
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