次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。
A さんは妊娠24 週0日に妊婦健康診査を受けた。体重60 kg(妊娠20 週の体重 は58 kg)。血圧138/88 mmHg、Hb 10.1 g/dL、Ht 31 %、尿蛋白(-)、尿糖(±) であった。A さんは「足が重い気がします」と話すが、脛骨上の圧痕は認めなかっ た。 このときのアセスメントで適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
妊娠24週0日、体重60kg(20週は58kg)、血圧138/88mmHg、Hb 10.1g/dL、Ht 31%、尿蛋白(-)、尿糖(±)、足が重い気がするが脛骨上の圧痕は認めない41歳初妊婦のアセスメントを問う。妊娠性貧血であることである。
この問題で問われていること
検査値と身体所見を、妊娠期の基準に照らして判定できるか。
しくみから理解する
妊娠性貧血は、ヘモグロビン11.0g/dL未満、またはヘマトクリット33%未満と定義される。この事例はHb 10.1g/dL、Ht 31%であり、いずれも基準を下回っている。妊娠中は循環血漿量が赤血球量以上に増加するため、見かけ上ヘモグロビン濃度が下がる(生理的な血液希釈)。しかしそれに加えて、胎児と胎盤への鉄の供給により鉄需要が増すため、鉄欠乏性貧血を生じやすい。妊娠中期から後期にかけて最も現れやすい。
選択肢ごとの確認
体重増加は過剰ではない。妊娠20週から24週の4週間で2kg、非妊時55kgから60kgで5kgの増加である。非妊時のBMIは55÷(1.58×1.58)=約22で普通体重にあたり、この場合の推奨される増加量は全期間で10〜13kg程度とされる。妊娠中期以降の増加は1週あたり0.3〜0.5kg程度が目安で、この事例は範囲内になる。
高血圧ではない。妊娠高血圧症候群の基準は、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上である。138/88mmHgはいずれも基準未満になる。ただし基準値に近いため、以後の推移を注意して見る必要がある。
浮腫があるとは判定できない。設問文に「脛骨上の圧痕は認めなかった」と明記されている。本人の「足が重い気がする」という自覚はあるが、他覚的な圧痕浮腫の所見はない。妊娠後期には、増大した子宮による静脈還流の妨げから下肢のむくみを感じることが多く、生理的な範囲のことも多い。
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混同しやすいポイント
4つの選択肢が、それぞれ別の指標に対応しており、基準値を知らないと判定できない。妊娠性貧血=Hb 11.0g/dL未満またはHt 33%未満。妊娠高血圧=140/90mmHg以上。体重増加=非妊時BMIによる推奨範囲。浮腫=圧痕の有無で判定。数値を基準と照らす作業を、一つずつ行う型になる。とくに『足が重い気がする』という主観と、『圧痕は認めない』という客観を区別する点が問われている。
理解を深める
妊娠性貧血の多くは鉄欠乏性貧血で、鉄剤の内服と食事指導で対応する。鉄を多く含む食品(赤身の肉、レバー、赤身の魚、あさり、小松菜、ほうれん草、大豆製品)を挙げ、動物性食品に含まれるヘム鉄のほうが吸収されやすいこと、ビタミンCが吸収を助けること、タンニン(濃い茶、コーヒー)は吸収を妨げることを伝える。鉄剤の副作用として、悪心、便秘、黒色便がある。黒色便は正常な反応であることを事前に伝えておくと、消化管出血と誤解して服薬を中断することを防げる。貧血が続くと、母体の易疲労と分娩時の出血への耐性の低下、胎児発育不全や早産のリスクにつながる。妊娠期の血液検査は、初期と中期以降に行われ、貧血のほか血液型、感染症(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV、風疹抗体、HTLV-1)、血糖を確認する。この事例は41歳の初妊婦であり、妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病のリスクが高いため、血圧と血糖の推移にも継続して注意を払う。
間違えやすい考え方
検査値と所見の判定を問う型で、誤肢がそれぞれ別の指標である。基準値と照らして一つずつ判定する。
5分で振り返る
①妊娠性貧血=Hb 11.0g/dL未満またはHt 33%未満。②妊娠中は血液希釈に加え鉄需要の増加で貧血になりやすい。③妊娠高血圧症候群は140/90mmHg以上。④浮腫は圧痕の有無で判定する(自覚だけでは判定しない)。⑤体重増加は非妊時BMIで推奨範囲が決まる(普通体重で10〜13kg)。⑥鉄剤は黒色便が出ることを事前に伝える。⑦ビタミンCは吸収を助け、濃い茶は妨げる。
1分チェック
- 妊娠性貧血の基準は。→ Hb 11.0g/dL未満、またはHt 33%未満。
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