次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。
A さんは夫に付き添われ、妊娠35 週4日に妊婦健康診査を受けた。妊婦健康診 査では、体重65 kg、血圧126/76 mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。浮腫(±)。子 宮底長30 cm、腹囲88 cm で異常を認めなかった。その後、A さんは看護師に「夕 方になると足がだるくなり、膝の裏を見たら、血管が膨らんで、青く浮き出ていま した」と言う。 A さんへの指導で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
妊娠35週4日、異常所見がなく、夕方に足がだるく、膝の裏に血管が膨らんで青く浮き出ていると訴えた妊婦への指導を問う。「弾性ストッキングを着用しましょう」である。
この問題で問われていること
症状の機序を理解し、それに直接働きかける方法を選べるか。
しくみから理解する
妊娠後期には、増大した子宮が下大静脈と骨盤内の静脈を圧迫し、下肢からの静脈還流が妨げられる。加えて、プロゲステロンの作用により静脈壁の平滑筋が弛緩し、循環血液量も増加している。これらが重なって下肢の静脈圧が上がり、静脈が拡張して静脈瘤を生じる。弾性ストッキングは、足首から上に向かって段階的に弱くなる圧をかけることで、静脈の断面積を減らして血流の速度を上げ、逆流を防いで還流を助ける。症状の機序に直接働きかける方法であり、深部静脈血栓症の予防にもなる。
選択肢ごとの確認
体重を減らす指導は適切でない。妊娠35週で体重65kg(非妊時55kg)、増加は10kgで、推奨範囲内にある。妊娠中の減量は、胎児の発育に必要な栄養が不足する危険があり、行わない。
腹帯を強く巻くと、腹部の圧迫により静脈還流がさらに妨げられ、症状を悪化させる。腹帯は腰痛の軽減や腹部の保温を目的とするもので、締めつけるものではない。ゆるめに、腹部を持ち上げるように装着する。
立っている時間が長いほど静脈圧が上がり、症状は悪化する。指導としては逆になる。長時間の立位と座位を避け、こまめに姿勢を変え、休息時には下肢を挙上する。
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混同しやすいポイント
3つの誤肢は、いずれも静脈還流を妨げるか、栄養を損なう方向を向いている。機序(静脈還流の障害)を押さえれば、還流を助けるものを選ぶという判断ができる。弾性ストッキングだけでなく、下肢の挙上、こまめな体位変換、左側臥位での休息(下大静脈の圧迫を避ける)、下肢の運動(ふくらはぎの筋ポンプを働かせる)も同じ方向の対応になる。
理解を深める
妊娠中の下肢静脈瘤は多くが分娩後に改善するが、症状が強い場合や再発を繰り返す場合には、産後に治療を検討する。弾性ストッキングは、朝、起床してむくみが出る前に装着すると効果的である。締めつけが強すぎるもの、しわが寄ったもの、丸まったものは、かえって局所を圧迫して害になるため、サイズの選択と装着の方法を確認する。同じ機序で生じるものとして、外陰部の静脈瘤と痔核がある。痔核は、静脈瘤に加えて便秘といきみが関わるため、水分と食物繊維の摂取、排便習慣の調整も併せて指導する。妊娠中は血液が凝固しやすい状態にあり、静脈還流の障害と重なって深部静脈血栓症のリスクが高まる。片側の下肢の腫脹、疼痛、熱感、色の変化がある場合は、静脈瘤ではなく血栓症を疑って受診するよう伝える。呼吸困難や胸痛は肺血栓塞栓症を示唆する緊急の徴候になる。
間違えやすい考え方
『適切な指導』を問う型で、誤肢がすべて還流を妨げるか栄養を損なう方向である。機序(静脈還流)で切る。
5分で振り返る
①増大した子宮による静脈の圧迫、プロゲステロンによる静脈壁の弛緩、循環血液量の増加で生じる。②弾性ストッキングは段階的圧迫で還流を助け、血栓症の予防にもなる。③腹帯を強く巻くと悪化する。④長時間の立位を避け、下肢を挙上し、左側臥位で休む。⑤妊娠中の減量は行わない。⑥朝、むくむ前に装着する。⑦片側の腫脹・疼痛・熱感は深部静脈血栓症を疑う。
1分チェック
- 妊娠後期の下肢静脈瘤にはどうするか。→ 弾性ストッキングの着用(静脈還流を助ける)。
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