次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(36歳、経産婦)は、夫(35歳)、男児(3歳)と3人で暮らしている。妊娠、分娩経過は順調で、妊娠39週5日で3,200gの女児を経腟分娩で出産した。1分後のApgar〈アプガー〉スコア9点、5分後のApgar〈アプガー〉スコア10点であった。産褥1日、Aさんの子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色であった。「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と看護師に話す。
このときのA さんへの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。
公式正答:3・5
解説
産褥1日の経産婦が「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れなかった」と話した場面での説明を2つ問う。「経産婦のほうが痛みを強く感じます」と「子宮が元の大きさに戻るための痛みです」である。
この問題で問われていること
後陣痛の機序と、経産婦で強くなる理由を説明できるか。
しくみから理解する
後陣痛は、産後に子宮が収縮して元の大きさへ戻る過程(子宮復古)に伴う痛みである。子宮筋の収縮により、胎盤剥離面の血管が圧迫されて止血され、同時に子宮が縮小していく。この収縮そのものが痛みとして感じられる。経産婦では、子宮筋が何度も伸展を経験しているため筋の緊張が低下しており、持続的な収縮を保ちにくい。そのため間欠的で強い収縮を繰り返すことになり、痛みを強く感じる。初産婦では持続的に収縮するため、痛みは比較的軽い。
選択肢ごとの確認
鎮痛薬は使用できる。授乳中でも使用できる鎮痛薬があり、痛みで眠れない状態を我慢させる理由はない。睡眠不足は疲労と育児への影響につながる。医師に相談し、必要に応じて使用する。
授乳をすると痛みは強まる。吸啜刺激により下垂体後葉からオキシトシンが分泌され、子宮の収縮が促されるためである。子宮復古には有利に働くが、痛みという点では強まる方向になる。「和らぎます」という説明は事実と逆であり、経験と食い違うと不信につながる。
産後5日までは長すぎる。後陣痛は産後2〜3日で軽減することが多い。長引く場合は、子宮復古不全や遺残、感染を考える。期間を誤って伝えると、不必要な不安を与えるか、逆に異常の発見を遅らせる。
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混同しやすいポイント
選択肢2が最も紛らわしい。授乳と子宮収縮の関係を知っていると、「授乳=オキシトシン=子宮収縮」までは思い出せるが、それが痛みを和らげるのか強めるのかで迷う。収縮が痛みの原因なのだから、収縮を促す授乳は痛みを強める。機序を最後までたどることが必要になる。また、経産婦で強い理由も、子宮筋の緊張低下という機序で説明できると定着する。
理解を深める
後陣痛への対応としては、痛みが生理的なもので子宮の回復に必要な過程であることを説明する(意味が分かると耐えやすくなる)、授乳の前に排尿を済ませる(膀胱の充満は収縮を妨げ痛みを強める)、腹臥位や側臥位で腹部を圧迫する姿勢をとる、温罨法、呼吸法、そして必要に応じた鎮痛薬の使用がある。授乳の直前に鎮痛薬を使うと、痛みが強まる時間帯に効果を得やすい。産褥期の観察としては、子宮底の高さと硬さ、悪露の量・色・におい、後陣痛の程度、排尿と排便、乳房の状態、疲労と睡眠、気分の変化を見る。この事例では、3歳の上の子がいる経産婦であり、退院後は新生児の世話と上の子の相手が重なる。睡眠と休息をどう確保するか、家族の支援をどう得るかを、入院中から一緒に考えることが実際的な支援になる。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢に『機序をたどると逆になる』ものが置かれている。収縮が痛みの原因という点から導く。
5分で振り返る
①後陣痛=子宮復古のための収縮に伴う痛み。②経産婦は子宮筋の緊張が低下し、間欠的に強く収縮するため痛みが強い。③授乳はオキシトシンを介して収縮を促すので痛みは強まる(和らがない)。④産後2〜3日で軽減する。⑤鎮痛薬は使用できる、我慢させない。⑥授乳前に排尿を済ませる(膀胱充満は収縮を妨げる)。⑦長引く場合は復古不全や遺残、感染を考える。
1分チェック
- 後陣痛はなぜ経産婦で強いか。→ 子宮筋の緊張が低下し、間欠的に強く収縮するため。
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