次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(36歳、経産婦)は、夫(35歳)、男児(3歳)と3人で暮らしている。妊娠、分娩経過は順調で、妊娠39週5日で3,200gの女児を経腟分娩で出産した。1分後のApgar〈アプガー〉スコア9点、5分後のApgar〈アプガー〉スコア10点であった。産褥1日、Aさんの子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色であった。「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と看護師に話す。
産褥3日、乳房は緊満、乳管開通は左右とも5、6本、射乳がある。1日8回授 乳をしている。児の体重は3,080 g で前日よりも20 g 減少している。「母乳で育て たいと思っていたけど、乳房が張って授乳がうまくできないです」と話す。 このときのA さんへの説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
産褥3日、乳房が緊満し、乳管開通は左右5〜6本、射乳があり、1日8回授乳しているが「乳房が張って授乳がうまくできない」と話す褥婦への説明を問う。「授乳の前に乳輪部のマッサージをしましょう」である。
この問題で問われていること
うまく吸着できない原因を、乳房の状態から特定できるか。
しくみから理解する
産褥3日頃は、乳汁の産生が急に増え、血流とリンパの流れも増すため、乳房全体が緊満する時期にあたる。乳輪部まで硬く張ると、児が乳輪ごと深く含むこと(吸着、ラッチオン)ができなくなり、乳頭だけを浅く吸う形になる。これでは乳汁が出にくく、乳頭に傷ができ、児も満足に飲めない。授乳の前に乳輪部を優しくマッサージして柔らかくすると、児が深く含めるようになり、授乳がうまくいく。原因(乳輪の硬さ)に直接働きかける方法であり、この事例の状況によく合う。
選択肢ごとの確認
水分を多めに摂ることは、乳汁分泌には必要だが、緊満して飲ませにくいという今の問題を解決しない。過剰な水分摂取が緊満をさらに強めることも考えられる。
時間を決めた授乳は、現在の考え方に合わない。児が欲しがるときに欲しがるだけ与える自律授乳が推奨される。頻回に飲ませることで乳汁がうっ滞せず、緊満も和らぐ。すでに1日8回授乳しており、回数を制限する方向は乳房のうっ滞を悪化させる。
乳房の張りが2週間続くという説明は正しくない。産褥3日頃をピークとする緊満は、適切に授乳できていれば数日で落ち着く。誤った見通しを伝えると、不安を与え、母乳育児の継続を妨げる。
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混同しやすいポイント
『何が授乳を妨げているか』を特定することが要点になる。乳管の開通も射乳もあり、乳汁は作られている。妨げているのは乳輪部の硬さであり、そこを柔らかくすれば解決する。誤肢は、分泌を増やす方向、回数を制限する方向、経過の説明であり、いずれも今の障害を取り除かない。
理解を深める
乳房緊満では授乳前にリバースプレッシャーソフトニングや少量の手搾乳で乳輪を柔らかくし、深い吸着を助ける。強い深部マッサージは組織損傷と炎症を増やし得るため避け、用いるなら軽いリンパドレナージ程度の接触にする。温熱は短時間の快適目的に限り、腫脹を悪化させることがある。授乳後は冷罨法などで症状を和らげる。
間違えやすい考え方
『適切な説明』を問う型で、誤肢が分泌を増やす方向・回数を制限する方向・誤った見通しである。何が妨げているかで切る。
5分で振り返る
①乳輪浮腫はリバースプレッシャーソフトニング。②必要なら授乳前に少量だけ手搾乳。③深い・強いマッサージをしない。④温熱は短時間の快適目的で、悪化時は中止。⑤授乳後は冷罨法を検討し、限局性発赤・発熱・強い痛みは評価する。
1分チェック
- 乳房が張って授乳できないときは。→ 授乳前に乳輪部を柔らかくして、深く含めるようにする。
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