次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(30歳、男性)は統合失調症schizophreniaで内服治療をしていた。最近、部屋にこもり、精神科受診以外は外出しなくなった。ある日、母親がAさんの部屋で大量の薬を見つけ、確認すると「薬は飲みたくない」と話した。受診に付き添った母親は「Aは昼間に寝ていて、夜に窓を開けて、隣の家に向かって『悪口を言うな』『監視するな』と大声で怒鳴る」と主治医に話した。Aさんと母親の強い希望があり、精神科病棟に入院することになり、薬物療法が開始された。入院3日、夜間の巡視のたびにAさんは起きていて「隣の人が自分を監視している」「皆が悪口を言っている」と小さな声で看護師に話した。日中はホールで眠そうにしていることもあり、レクリエーションには「疲れた」と言って参加しない。他の患者と話すことはあるがトラブルはない。歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う。
A さんのセルフケアの観察項目で優先度が高いのはどれか。
公式正答:2
解説
統合失調症で入院3日、夜間は起きていて幻聴と妄想を訴え、日中はホールで眠そうにしており、レクリエーションには疲れたと言って参加しない患者の、セルフケアの観察項目で優先度が高いものを問う。活動と休息のバランスである。
この問題で問われていること
事例に現れている問題が、セルフケアのどの領域に当たるかを判別できるか。
しくみから理解する
この事例では、夜間の巡視のたびに起きており、日中は眠そうにしているという、昼夜の逆転が明確に現れている。夜間に眠れないのは、幻聴と被害妄想により不安と警戒が続いているためと考えられる。睡眠が確保できないことは、精神症状の悪化、日中の活動性の低下、治療への参加の妨げにつながる。したがって、活動と休息のバランスの領域が、今この人にとって最も問題になっている。設問文の記述のうち、夜間の覚醒と日中の眠気、レクリエーションへの不参加が、すべてこの領域を指している。
選択肢ごとの確認
孤独と付き合いのバランスについては、「他の患者と話すことはあるがトラブルはない」と記載されており、現時点で大きな問題は生じていない。入院前は部屋にこもり外出しなくなっていたが、入院後は交流が保たれている。
安全を保つ能力については、自傷や他害の徴候の記載がない。夜間に窓を開けて大声で怒鳴る行為は入院前のことであり、入院後は「小さな声で看護師に話す」状態になっている。現時点で優先される領域ではない。
個人衛生については、「声をかけると行う」と記載されている。促しがあれば実施できており、完全に保てなくなっているわけではない。継続した観察は必要だが、優先度では活動と休息が上回る。
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混同しやすいポイント
選択肢は、オレムのセルフケア理論をアンダーウッドが精神科看護向けに整理した6領域に対応している。空気・水・食物、排泄、体温と個人衛生、活動と休息のバランス、孤独と付き合いのバランス、安全を保つ能力の6つである。事例文の記述を、どの領域の情報かに振り分けて読むと、どこに問題が集中しているかが見える。この事例では、睡眠と活動に関する記述が最も多く、かつ具体的である。
理解を深める
統合失調症の急性期から回復期にかけて、睡眠は症状の指標としても重要になる。眠れないことは、症状の悪化の前触れであることも、症状そのものの結果であることもある。看護としては、日中の活動を促して生活リズムを整える、夜間の環境を調整する(照明、音、他の患者の影響)、不安を語れる時間をつくる、服薬の効果と副作用を確認する(抗精神病薬による過鎮静で日中の眠気が生じている可能性もある)といった関わりを行う。この事例では、日中の眠気が夜間の不眠によるものか、薬剤の影響かを見極める必要がある。過鎮静であれば処方の調整を医師に相談する。セルフケアの視点で見ることの利点は、症状ではなく生活の側から患者を捉えられる点にある。何ができていて、何に支援が要るかを領域ごとに評価することで、その人の力を活かした支援を組み立てられる。
間違えやすい考え方
『優先度が高い観察項目』を問う型で、誤肢もすべてセルフケアの領域である。事例文の記述をどの領域か振り分けて切る。
5分で振り返る
①セルフケアの6領域=空気水食物、排泄、体温と個人衛生、活動と休息、孤独と付き合い、安全を保つ能力。②事例の記述をどの領域かに振り分けて読む。③夜間の覚醒と日中の眠気は昼夜逆転=活動と休息の問題。④睡眠の破綻は症状の悪化と治療参加の妨げになる。⑤日中の眠気が薬剤の過鎮静によるものかを見極める。⑥「声をかけると行う」は部分的にできている状態。
1分チェック
- 夜間覚醒と日中の眠気はどの領域の問題か。→ 活動と休息のバランス。
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