次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(64歳、男性、外国籍)は、1年前に日本に移住し、娘(36歳、会社員)と娘の夫(42歳、会社員、日本人)と3人家族である。娘の夫は海外に長期出張中で、娘は日本語での簡単な日常会話はできるが、Aさんはほとんど日本語が理解できない。Aさんは、2か月前から時々腰痛があり、市販薬で様子を見ていたが、徐々に腰痛が強くなり、娘に付き添われて受診した。検査の結果、肺癌〈lungcancer〉と診断され、胸膜と腰椎への転移が見つかり、疼痛コントロールの目的で入院した。
入院8日、疼痛がコントロールされてきたA さんは「家に帰りたい」と希望して いるが、娘は「仕事もあるし、もう少し病院にいてほしい」と話している。そこで、 看護師の提案によりA さんのアドバンス・ケア・プランニングが行われることに なった。 A さんのアドバンス・ケア・プランニングで適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
疼痛がコントロールされ「家に帰りたい」と希望する患者と、「もう少し病院にいてほしい」と話す娘の間で、アドバンス・ケア・プランニングを行う場面での適切な内容を問う。Aさんが大切にしていることや生きがいについて話してもらうことである。
この問題で問われていること
アドバンス・ケア・プランニングの目的を、手続きや調整と区別できるか。
しくみから理解する
アドバンス・ケア・プランニングは、将来の医療とケアについて、本人が望む生き方を中心に、家族等と医療・ケアチームが繰り返し話し合い、共有していく過程である。出発点は、本人が何を大切にし、何を大事にして生きてきたか、どのような状態であれば自分らしいと感じるかという価値観にある。治療の選択や療養の場は、その価値観から導かれるものであって、先に決めるものではない。したがって、大切にしていることや生きがいについて話してもらうことが、この過程の中心になる。
選択肢ごとの確認
退院の手続きを進めることは、話し合いの結果として選ばれる行動であって、話し合いそのものではない。本人と家族の考えが一致していない段階で手続きを先行させれば、意思決定を飛ばすことになる。
記録を施設外に提供しないという扱いは適切でない。アドバンス・ケア・プランニングで共有された本人の意向は、在宅医、訪問看護、介護、救急搬送先といった関わる人々に伝わってこそ意味を持つ。急変時に本人の意向が伝わらなければ、望まない医療が行われうる。本人の同意を得たうえで、関係者間で共有する。
娘の思いや不安も重要であり、話し合いの中で扱う。しかし優先されるのは本人の意向である。家族の負担や不安は、それを軽減する支援(訪問看護の増回、介護サービス、レスパイト、緊急時の体制)によって解決を図るものであって、本人の希望を退ける理由にしない。
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混同しやすいポイント
アドバンス・ケア・プランニングを『延命治療をするかしないかを決めること』や『書類を作ること』と捉えていると、選択肢1や3を選びやすい。中心にあるのは、本人の価値観を知り、共有し、繰り返し確認していく過程である。決定した内容よりも、話し合いの過程そのものに意味があるとされる。状況が変われば意向も変わりうるため、一度決めたら終わりではない。
理解を深める
厚生労働省は、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインを示し、本人の意思を基本とすること、医療・ケアチームで慎重に判断すること、本人の意思が確認できない場合は家族等が推定する意思を尊重すること、繰り返し話し合うことを定めている。愛称として人生会議という言葉が用いられている。話し合いの内容は、記録して関係者で共有する。本人の意思が変わることは自然であり、その都度更新する。この事例では、本人が「家に帰りたい」と明確に述べており、疼痛もコントロールされてきている。娘の心配は、仕事との両立と介護の負担にあると考えられる。であれば、訪問診療、訪問看護、訪問介護、福祉用具、緊急時の連絡体制を組み立てて、その負担を減らせるかを具体的に検討する。言葉の壁があるため、多言語の資料や医療通訳も必要になる。本人の希望と家族の事情の両方を扱いながら、本人の意向を中心に置くという姿勢が求められる。
間違えやすい考え方
『適切な内容』を問う型で、誤肢が手続きの先行・共有の否定・家族優先で構成されている。過程の目的(本人の価値観)で切る。
5分で振り返る
①アドバンス・ケア・プランニングは本人の価値観を中心に、家族等とチームで繰り返し話し合う過程。②治療や療養の場の選択は価値観から導かれる。③決定した内容より過程に意味があり、意向は変わりうる。④共有された意向は関係者に伝わってこそ意味を持つ(本人の同意のうえ共有する)。⑤家族の不安は支援で軽減し、本人の希望を退ける理由にしない。⑥厚生労働省のガイドラインがあり、愛称は人生会議。
1分チェック
- アドバンス・ケア・プランニングで最初に話すことは。→ 本人が大切にしていることや生きがい(価値観)。
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