ヘリコバクター・ピロリ感染症 Helicobacter pylori infection で正しいのはどれか。
公式正答:1
解説
ヘリコバクター・ピロリ感染症で正しいものを問う。尿素呼気検査は診断に有用であることである。
この問題で問われていること
菌の性質と、それを利用した検査の原理を理解しているか。
しくみから理解する
ヘリコバクター・ピロリはウレアーゼという酵素を産生する。ウレアーゼは尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する。尿素呼気検査は、この性質を利用する。標識した炭素(13C)を含む尿素を内服すると、胃に菌がいればウレアーゼによって分解され、標識された二酸化炭素が生じて血中に吸収され、呼気中に排出される。この呼気を採取して測定することで、菌の存在を判定する。非侵襲的で精度が高く、感染診断と除菌判定の両方に用いられる標準的な検査である。
選択肢ごとの確認
早すぎる。除菌治療の直後は、菌が減少していても完全に消失していない、あるいは検査が偽陰性となる可能性がある。判定は除菌薬の服用終了から4週間以上(多くは6〜8週後)を空けて行う。プロトンポンプ阻害薬も検査結果に影響するため、休薬期間を設ける。
生息するのは胃粘膜の表面を覆う粘液層であり、粘膜上皮に付着して存在する。粘膜下層に潜り込むわけではない。らせん状の形態と鞭毛によって粘液層の中を移動する。
作り出すのは尿素ではなくアンモニアである。菌は自ら尿素を産生するのではなく、胃内に存在する尿素をウレアーゼで分解し、生じたアンモニアで周囲の胃酸を中和して自らを守る。この選択肢は、正しい機序の一部を入れ替えた誤りで、非常に紛らわしい。生成物と基質を取り違えている。
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混同しやすいポイント
選択肢4が最も注意を要する。『尿素を作り出す』のではなく『尿素を分解してアンモニアを作る』が正しい。ウレアーゼ=尿素分解酵素であり、基質が尿素、生成物がアンモニアと二酸化炭素、という向きを確認する。この向きを押さえていれば、尿素呼気検査の原理も同時に理解できる。
理解を深める
検査は、内視鏡を用いるもの(迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法)と、用いないもの(尿素呼気検査、血中・尿中抗体測定、便中抗原測定)に分かれる。抗体測定は除菌後も長く陽性が続くため、除菌判定には適さない。除菌治療は、プロトンポンプ阻害薬(またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー)+アモキシシリン+クラリスロマイシンの3剤を1週間内服する一次除菌が基本で、不成功であればクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えた二次除菌を行う。副作用として下痢、味覚異常、発疹があり、服薬を自己中断すると耐性菌を生じるため、最後まで飲み切るよう説明する。除菌により、消化性潰瘍の再発が大きく減り、胃癌のリスクも低下する。感染は幼少期の家族内感染が主とされ、衛生環境の改善により若年層の感染率は低下している。萎縮性胃炎が進んだ状態では、除菌後も胃癌のリスクが残るため、定期的な内視鏡検査を続ける必要がある。
間違えやすい考え方
『正しいのはどれか』型で、誤肢が時期の誤り、生息部位の誤り、機序の入れ替えで構成されている。ウレアーゼの向きで切る。
5分で振り返る
①ヘリコバクター・ピロリはウレアーゼで尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する。②アンモニアで胃酸を中和して自らを守る(尿素を作るのではない)。③生息は胃粘膜表面の粘液層。④尿素呼気検査は非侵襲的で診断と除菌判定に用いる。⑤除菌判定は服用終了から4週間以上あける。⑥抗体測定は除菌判定に適さない。⑦除菌で潰瘍の再発と胃癌リスクが低下する。
1分チェック
- 尿素呼気検査は何を見ているか。→ 菌のウレアーゼが尿素を分解して生じる標識二酸化炭素。
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