A ちゃん(1歳7か月、女児)は先天性水頭症〈congenital hydrocephalus〉のため脳室-腹腔〈V-P〉シャント造 設術を受けて退院した。A ちゃんは歩行障害があり、母親が1人で育てている。 退院後、訪問看護師が訪問すると、A ちゃんの母親は「子どもが泣くとイライラし ます。この先A を育てていく自信がなく、経済的にも生活していけるか不安です」 と話した。 このとき、訪問看護師が母親に勧める相談先で最も適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
先天性水頭症で脳室腹腔シャントを造設した1歳7か月児の母親が、育児の負担から余裕を失っている状況で、訪問看護師が連携する先を問う。居住地の保健センターである。
この問題で問われていること
母子保健の担い手を、継続的な支援という観点から選べるか。
しくみから理解する
市町村の保健センターは、母子保健法に基づき、乳幼児健康診査、保健指導、新生児訪問・乳児家庭全戸訪問、育児相談を担う、地域の母子保健の中核である。母親が一人で障害のある子どもを育て、余裕を失っている状況は、育児不安と、その先にある虐待のリスクを含む。保健センターの保健師は、継続的に家庭を訪問し、母子の状況を把握し、必要な社会資源(子育て支援、障害児支援、経済的支援、レスパイト)へつなぐ役割を持つ。市町村が実施主体であるため、その後の支援も途切れずに続く点が重要である。
選択肢ごとの確認
地域福祉の推進を担い、ボランティア活動の調整、日常生活自立支援事業、生活福祉資金の貸付などを行う。育児不安への継続的な母子保健の支援を担う機関ではない。
同じ立場の親と出会えるピアサポートの場であり、有用な資源である。ただし今の段階で必要なのは、母子の状況を専門的に評価し、必要な支援を組み立て、継続してフォローする体制である。当事者グループはその後の選択肢として紹介するのが順序になる。
シャント機能の異常など医学的な問題があれば連絡先になる。しかし現在の課題は医学的な問題ではなく、在宅での育児の負担と母親の心理的な状態であり、地域で継続的に支える機関が適する。退院後の生活の場は地域であり、支援も地域の機関が担う。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも『間違いではない資源』である。この型では、今どの段階で、何を必要としているかを読む。設問の状況は、医学的な緊急事態ではなく、育児不安と孤立であり、必要なのは継続的な母子保健の支援になる。また、母親が一人で育てているという情報から、支えが不足していることが読み取れる。
理解を深める
母親の『イライラする』という訴えは、援助を求めるサインとして受け止める。育児不安が強い状態を放置すると、虐待に至る危険がある。児童虐待の防止等に関する法律では、虐待を受けたと思われる児童を発見した者に通告の義務があるが、その前段階で予防的に関わることが重要になる。障害のある子どもの育児では、医療的ケア、通院、リハビリテーション、きょうだいへの対応、就労の困難、将来への不安が重なる。使える資源としては、保健センターの保健師による継続訪問、児童発達支援(療育)、居宅介護、短期入所(レスパイト)、相談支援専門員によるサービス等利用計画、特別児童扶養手当、小児慢性特定疾病医療費助成、自立支援医療(育成医療)がある。訪問看護師は、シャント機能の観察(頭囲の測定、大泉門、嘔吐、機嫌、意識、けいれん)を続けながら、母親の状態にも目を向け、必要な機関につなぐ。一人で抱えず、多機関で支える体制をつくることが看護の役割になる。
間違えやすい考え方
連携先を問う型で、誤肢がいずれも有用な資源である。今の段階で必要なものは何かで切る。
5分で振り返る
①保健センターは母子保健法に基づく地域の母子保健の中核(健診、訪問、育児相談)。②市町村が実施主体なので継続支援が途切れない。③育児不安の放置は虐待のリスクにつながる。④社会福祉協議会は地域福祉、医療相談室は医学的な問題の窓口。⑤当事者グループは有用だが評価と体制づくりの後。⑥障害児支援は児童発達支援、レスパイト、相談支援専門員、各種手当。⑦シャントの観察は頭囲・大泉門・嘔吐・機嫌・意識。
1分チェック
- 在宅の育児不安に継続的に関わる機関は。→ 市町村の保健センター(母子保健の中核)。
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