全身麻酔下で肺切除術を受ける高齢者への説明で優先度が高いのはどれか。
公式正答:3
解説
全身麻酔下で肺切除術を受ける高齢者への説明で優先度が高いものを問う。術前に深呼吸や排痰の練習をすることである。
この問題で問われていること
その手術で最も起こりやすい合併症から、優先すべき指導を導けるか。
しくみから理解する
肺切除術では、術後に無気肺と肺炎という呼吸器合併症が最も起こりやすい。理由は複数ある。全身麻酔と気管挿管により気道の線毛運動が低下し分泌物が増える。切除により肺の容量が減る。開胸創や胸腔ドレーンの疼痛で深く息が吸えず、咳もできない。高齢者では、もともとの肺活量と咳嗽力の低下、喀痰の喀出力の低下が加わる。したがって、術前から深呼吸と排痰の方法を練習しておくことが、合併症の予防に直結する。術後に痛みがある状態で初めて教わるより、術前に習得しておくほうがはるかに実行しやすい。
選択肢ごとの確認
必要な場合もあるが、優先度は低い。近年は早期離床が推奨され、術後早期にトイレでの排泄へ移行することが多い。長期の臥床を前提とした練習は、かえって離床を遅らせる考え方につながる。
術前訪問は不安の軽減と情報の共有に有用であり、実際に行われている。しかし合併症を防ぐという観点での優先度は、呼吸訓練に及ばない。
深部静脈血栓症の予防として重要である。ただし肺切除術という術式で最も頻度が高く、生命に関わりやすいのは呼吸器合併症であり、優先度では呼吸訓練が上回る。両方とも行うが、順位を問われれば呼吸である。
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混同しやすいポイント
『優先度が高いのはどれか』では、誤肢もすべて実施される内容である。判断の基準は、その手術で最も起こりやすく、影響の大きい合併症は何か、である。肺切除術=呼吸器合併症、腹部手術=イレウスと創感染、整形外科の下肢手術=深部静脈血栓症、というように、術式と代表的な合併症を結びつけておくと、この型に対応できる。
理解を深める
術前の呼吸リハビリテーションには、深呼吸(横隔膜呼吸)、インセンティブスパイロメトリーの使用、口すぼめ呼吸、有効な咳嗽(創部を手や枕で押さえて咳をする方法)、ハフィング(声門を開いたまま強く息を吐く排痰法)、体位ドレナージがある。あわせて禁煙が極めて重要で、術前少なくとも4週間の禁煙が合併症を減らすとされる。術後は、疼痛管理を十分に行うこと自体が呼吸器合併症の予防になる。痛くて深呼吸できない状態を放置すると無気肺が進むためで、鎮痛は快適さのためだけでなく、治療の一部として位置づけられる。胸腔ドレーンの管理では、水封部の呼吸性変動、エアリーク、排液の量と性状を観察し、クランプしない、挿入部より高く上げない、という原則を守る。早期離床も、換気の改善、排痰の促進、血栓の予防に同時に効く。高齢者では、せん妄の予防(見当識の手がかり、睡眠、疼痛管理、早期離床)も重要な看護になる。
間違えやすい考え方
『優先度が高いのはどれか』型で、誤肢もすべて実施される内容である。術式と合併症の結びつきで切る。
5分で振り返る
①肺切除術で最も起こりやすいのは無気肺と肺炎。②術前から深呼吸・排痰・咳嗽の練習をしておく(術後は痛くて習得しにくい)。③術前4週間以上の禁煙が合併症を減らす。④疼痛管理は呼吸器合併症の予防そのもの。⑤胸腔ドレーンはクランプしない、挿入部より高く上げない。⑥早期離床は換気・排痰・血栓予防に同時に効く。⑦高齢者ではせん妄の予防も重要。
1分チェック
- 肺切除術で最も予防すべき術後合併症は。→ 無気肺と肺炎(術前から深呼吸と排痰を練習する)。
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