患者が看護師を愛情深い親のような存在とみなし、看護師に対して肯定的な感情 を抱くのはどれか。
公式正答:4
解説
患者が看護師を愛情深い親のような存在とみなし、肯定的な感情を抱くのはどれかを問う。陽性転移である。
この問題で問われていること
治療関係のなかで起こる感情の動きを、用語として区別できるか。
しくみから理解する
転移とは、患者が過去の重要な人物(多くは親)に対して抱いていた感情を、無意識のうちに目の前の援助者へ向ける現象である。向けられる感情が、愛情、信頼、依存、理想化といった肯定的なものである場合を陽性転移、怒り、敵意、不信、拒絶といった否定的なものである場合を陰性転移という。設問の「愛情深い親のような存在とみなす」「肯定的な感情を抱く」は、そのまま陽性転移の記述にあたる。転移は治療関係のなかで自然に生じるもので、それ自体が異常なのではない。
選択肢ごとの確認
投影は、自分のなかにある受け入れがたい感情や欲求を、他者が持っているものとして体験する防衛機制である。自分の怒りを認められず「あの人が怒っている」と感じるのが例になる。過去の人物への感情を援助者に向ける転移とは別の機序である。
共依存は、相手の世話をすることで自分の存在価値を保ち、互いに離れられなくなる関係のあり方を指す。依存症のある人とその家族の関係を説明する文脈で用いられることが多い。援助者と患者の間にも生じうるが、患者が感情を向けるという転移の説明ではない。
反動形成は、受け入れがたい欲求とは正反対の態度や行動をとる防衛機制である。強い敵意を抱く相手に、過剰に礼儀正しく接するのが例になる。これも防衛機制であって転移ではない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
転移と防衛機制が混ざった選択肢構成になっている。転移=過去の重要な人物への感情が援助者に向かう。防衛機制(投影・反動形成)=自分の内的な葛藤を処理する仕組み。設問文が「看護師に対して」「みなし」と、向かう先を明示している点が、転移を指す手がかりになる。
理解を深める
看護師の側に起こる感情の動きは逆転移という。患者に対して特別な思い入れを持つ、逆に苛立ちや回避したい気持ちを抱く、といった形で現れる。逆転移そのものは避けられないが、気づかないまま行動に移すと、治療的な関係が損なわれる。特定の患者にだけ多くの時間を割く、逆に訪室が減る、といった形で行動に現れることがある。だからこそ、自分の感情を振り返り、カンファレンスやスーパービジョンで言語化する場が必要になる。陽性転移も、放置すれば過度な依存や、要求が満たされないときの陰性転移への反転を招く。看護師は、患者の感情を否定せず受け止めながら、専門職としての関係の枠(時間、役割、距離)を保つ。この枠が、患者を守るものでもある。ペプロウは、看護師と患者の関係を、方向づけ、同一化、開拓利用、問題解決という段階で捉え、関係そのものが治療的な意味を持つとした。
間違えやすい考え方
用語を問う型で、誤肢が防衛機制と関係のあり方で構成されている。感情がどこからどこへ向かうかで切る。
5分で振り返る
①転移=過去の重要な人物への感情を援助者に向ける。②肯定的なら陽性転移、否定的なら陰性転移。③看護師の側に起こるのが逆転移。④投影・反動形成は防衛機制で別の機序。⑤共依存は互いに離れられない関係のあり方。⑥逆転移は気づいて言語化する(カンファレンス、スーパービジョン)。⑦陽性転移も放置すれば過度な依存や陰性転移への反転を招く。
1分チェック
- 患者が看護師に親のような肯定的感情を向けるのは。→ 陽性転移(否定的なら陰性転移)。
この問題に対応する教材の確認中です。