術後の回復過程でエネルギー不足の場合にケトン体の供給源となるのはどれか。
公式正答:3
解説
術後の回復過程でエネルギー不足の場合にケトン体の供給源となるものを問う。脂肪酸である。
この問題で問われていること
飢餓時のエネルギー供給の流れを、基質と生成物の関係で追えるか。
しくみから理解する
単純な飢餓では、まず肝臓のグリコーゲンが分解されて血糖が保たれるが、これは半日程度で尽きる。次いで脂肪組織の中性脂肪が分解され、脂肪酸とグリセロールが放出される。脂肪酸は肝臓へ運ばれてβ酸化を受け、アセチルCoAを生じる。糖が不足した状態ではオキサロ酢酸が糖新生に使われるため、アセチルCoAがクエン酸回路へ入りきれず、余ったアセチルCoAからケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン)が合成される。ケトン体は血中を運ばれ、脳や心筋、骨格筋がエネルギー源として利用できる。したがってケトン体の供給源は脂肪酸である。なお術後の異化反応は、この順序どおりには進まない。カテコールアミン、コルチゾール、グルカゴンの増加により、グリコーゲン、脂肪、蛋白の分解が同時に進み、筋蛋白の分解も早期から始まる。だからこそ早期の栄養管理が重視される。
選択肢ごとの確認
乳酸は、嫌気的解糖の産物である。肝臓へ運ばれて糖新生の材料となり、グルコースに戻る(コリ回路)。ケトン体の材料ではない。乳酸が蓄積すれば乳酸アシドーシスとなる。
尿酸は、プリン体の代謝の最終産物であり、エネルギー代謝の基質ではない。血中濃度が高い状態が高尿酸血症で、痛風や尿路結石の原因になる。
蛋白質は、分解されてアミノ酸となり、糖新生の材料やエネルギー源になる。飢餓が続けば筋蛋白の分解が進むが、アミノ酸から主に作られるのはグルコース(糖原性アミノ酸)であり、ケトン体の主たる供給源は脂肪酸である。なおロイシンやリシンはケト原性アミノ酸としてケトン体を生じうるが、量としては脂肪酸が主になる。
アンモニアは、アミノ酸の脱アミノ反応で生じる有毒な物質で、肝臓の尿素回路で尿素に変えられて排泄される。エネルギー源ではない。肝機能が低下すると血中に蓄積し、肝性脳症の原因になる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
選択肢は代謝に関わる物質が並んでおり、それぞれがどの経路のどこに位置するかを知っている必要がある。整理すると、乳酸=嫌気的解糖の産物で糖新生の材料、尿酸=プリン体の最終産物、脂肪酸=β酸化でアセチルCoAを生じケトン体の材料、蛋白質(アミノ酸)=糖新生の材料、アンモニア=アミノ酸代謝の産物で尿素へ。エネルギー源になるかどうかで大きく2つに分かれる。
理解を深める
術後は、侵襲に対する生体反応としてカテコールアミン、コルチゾール、グルカゴンといった異化ホルモンが増加し、グリコーゲン、脂肪、蛋白の分解が同時に進む。単純な飢餓のように順番に動員されるのではなく、筋蛋白の分解も早期から始まる点が違いになる。ムーアは術後の回復過程を、傷害期、転換期、同化期(筋力回復期)、脂肪蓄積期の4相に分けた。傷害期には、水とナトリウムの貯留、尿量の減少、血糖の上昇、体温の上昇がみられ、エネルギーは主に体内の貯蔵から供給される。この時期に十分な栄養が入らないと、筋蛋白の分解が進んで回復が遅れるため、早期からの栄養管理(可能であれば経腸栄養)が重視されるようになっている。ケトン体は飢餓時の重要なエネルギー源だが、糖尿病でインスリンが著しく不足した状態では、脂肪分解が制御されずにケトン体が過剰に産生され、糖尿病性ケトアシドーシスとなる。同じ物質が、状況によって適応にも病態にもなる点が理解の要になる。
間違えやすい考え方
代謝の基質を問う型で、誤肢が代謝経路の別の物質である。どの経路のどこに位置するかで切る。
5分で振り返る
①単純な飢餓では、グリコーゲン→脂肪→蛋白の順に動員される。ただし術後の異化反応では、異化ホルモンの増加により複数の基質が同時に動員され、筋蛋白の分解も早期から始まる。②脂肪酸はβ酸化でアセチルCoAとなり、余った分からケトン体が作られる。③ケトン体は脳や心筋のエネルギー源になる。④乳酸は糖新生の材料(コリ回路)、尿酸はプリン体の最終産物。⑤アミノ酸は主に糖新生へ、アンモニアは尿素回路で処理。⑥術後は異化が亢進するため早期の栄養管理が重要。⑦インスリン欠乏では糖尿病性ケトアシドーシスになる。
1分チェック
- ケトン体は何から作られるか。→ 脂肪酸(β酸化でアセチルCoAを経て)。
この問題に対応する教材の確認中です。