狭窄による血流低下で二次性高血圧〈secondary hypertension〉を起こす血管はどれか。
公式正答:4
解説
狭窄による血流低下で二次性高血圧を起こす血管を問う。腎動脈である。
この問題で問われていること
血圧を上げる仕組みが、どの臓器の血流低下によって作動するかを説明できるか。
しくみから理解する
腎動脈が狭窄すると、その腎臓へ流れる血液量が減る。腎臓は、これを全身の血圧低下や循環血液量の減少と受け取り、傍糸球体装置からレニンを分泌する。レニンはアンジオテンシノゲンをアンジオテンシンIに変え、アンジオテンシン変換酵素によりアンジオテンシンIIとなる。アンジオテンシンIIは強力な血管収縮作用を持ち、さらに副腎皮質からアルドステロンの分泌を促してナトリウムと水の再吸収を増やす。この二つの作用により血圧が上昇する。腎臓自身の血流を保とうとする反応が、全身の高血圧をもたらすという構図になる。
選択肢ごとの確認
冠動脈の狭窄は、心筋への血流が減って狭心症や心筋梗塞を起こす。血圧を上げる内分泌系の反応は生じない。むしろ広範な心筋梗塞では心拍出量が低下し血圧は下がる。
肝動脈の狭窄は、肝臓の虚血に関わるが、血圧を上昇させる内分泌の仕組みを持たない。なお門脈圧亢進は肝硬変などで生じるが、これは全身の高血圧とは別の病態である。
頸動脈の狭窄は、脳への血流低下により一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こす。なお頸動脈洞には圧受容器があり、血圧の調節に関わるが、狭窄によって二次性高血圧を起こす代表的な血管ではない。
脳動脈の狭窄も脳虚血の原因になる。頭蓋内圧が亢進した場合には、脳血流を保つために血圧が上昇するクッシング現象が生じるが、これは狭窄による血流低下とは機序が異なる。
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混同しやすいポイント
『どの臓器が血圧を上げる仕組みを持っているか』という観点で考えれば一意に決まる。腎臓はレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系という血圧調節の中枢的な仕組みを持ち、自らの血流低下を感知して作動させる。他の臓器の血流低下は、その臓器の虚血症状を起こすだけで、全身の血圧を持続的に上げる仕組みにはならない。
理解を深める
高血圧の約9割は原因の特定できない本態性高血圧で、残りが二次性高血圧になる。二次性高血圧の原因には、腎実質性(慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症)、腎血管性(腎動脈狭窄)、内分泌性(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群、甲状腺機能異常)、大動脈縮窄症、睡眠時無呼吸症候群、薬剤性(副腎皮質ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、経口避妊薬、甘草)がある。若年発症、急激な発症、治療抵抗性、低カリウム血症といった特徴があれば二次性を疑う。腎血管性高血圧では、腹部の血管雑音、レニン活性の上昇がみられ、画像で狭窄を確認する。原因を治療すれば血圧が改善しうる点が、本態性高血圧との大きな違いになる。なお腎動脈狭窄がある人にアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬を用いると、糸球体濾過圧が保てなくなり腎機能が急激に悪化することがあるため、両側性の狭窄では禁忌となる。
間違えやすい考え方
疾患の原因部位を問う型で、誤肢がすべて虚血症状を起こす血管である。血圧を上げる仕組みを持つ臓器かどうかで切る。
5分で振り返る
①腎動脈狭窄→腎血流低下→レニン分泌→アンジオテンシンII(血管収縮)とアルドステロン(Na・水の再吸収)→血圧上昇。②他の血管の狭窄はその臓器の虚血を起こすが全身の高血圧にはならない。③高血圧の約9割は本態性、残りが二次性。④二次性を疑うのは若年発症・急激・治療抵抗性・低カリウム血症。⑤原因を治療すれば血圧が改善しうる。⑥両側性腎動脈狭窄ではACE阻害薬・ARBが禁忌。
1分チェック
- 腎動脈の狭窄はなぜ高血圧を起こすか。→ 腎血流の低下がレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を作動させるため。
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