A さん(35 歳、女性)は1年前に子宮体癌〈uterine corpus cancer〉のために単純子宮全摘出術と両側卵巣 摘出術を受け、その後、ホルモン補充療法は受けずに健康に過ごしている。 A さんの血液中で術前よりも濃度が上昇しているホルモンはどれか。2つ選べ。
公式正答:4・5
解説
35歳女性が単純子宮全摘出術と両側卵巣摘出術を受け、ホルモン補充療法を受けていない場合に、術前より血中濃度が上昇しているホルモンを2つ問う。黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)である。
この問題で問われていること
負のフィードバックの仕組みを、標的臓器を失った状態に当てはめられるか。
しくみから理解する
視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、下垂体前葉からLHとFSHが分泌される。これらが卵巣に働いてエストロゲンとプロゲステロンが産生され、これらのホルモンが視床下部と下垂体に負のフィードバックをかけて、LHとFSHの分泌を抑えている。両側の卵巣を摘出すると、エストロゲンとプロゲステロンが産生されなくなるため、負のフィードバックが外れる。その結果、下垂体はLHとFSHを盛んに分泌し続け、血中濃度は術前より著しく上昇する。閉経後に同じ状態になるのと同じ機序である。
選択肢ごとの確認
テストステロンは、女性では卵巣と副腎皮質で産生される。両側卵巣摘出により卵巣由来の分が失われるため、低下する。副腎由来の分は残るが、上昇はしない。
プロゲステロンは黄体から分泌される。卵巣がなくなれば産生されないため、著しく低下する。
エストラジオールは、卵巣から分泌される最も活性の高いエストロゲンである。卵巣摘出により大きく低下する。閉経後や卵巣摘出後には、脂肪組織などでアンドロゲンから変換されるエストロンがわずかに残るのみとなる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
負のフィードバックの向きを取り違えないことが要点になる。産生する側(卵巣)を失うと、そのホルモンは下がり、それを促していた上位のホルモン(LH・FSH)は上がる。同じ構図は他の内分泌でも成り立つ。甲状腺を摘出すればT3・T4が下がりTSHが上がる。副腎皮質機能低下症ではコルチゾールが下がりACTHが上がる。『下位が下がれば上位が上がる』と一般化して覚える。
理解を深める
35歳での両側卵巣摘出は、外科的閉経にあたる。自然の閉経が数年かけて緩やかに進むのに対し、術後は急激にエストロゲンが欠乏するため、ホットフラッシュ、発汗、不眠、抑うつ、易疲労、腟の乾燥といった更年期症状が強く現れやすい。さらに長期的には、骨密度の低下(骨粗鬆症)、脂質異常症と心血管疾患のリスク上昇、認知機能への影響が問題になる。若年での卵巣欠落では、これらのリスクを考えてホルモン補充療法が検討されるが、癌腫や既往によっては適応とならない。この事例ではホルモン補充療法を受けていないため、骨密度の測定、脂質と血圧の管理、カルシウムとビタミンDの摂取、運動、禁煙といった予防的な関わりが重要になる。また、子宮と卵巣を失ったことは、妊孕性の喪失と女性としての自己像に関わる体験でもあり、身体の管理だけでなく心理的な支援が要る。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢がすべて卵巣由来で低下するホルモンである。負のフィードバックの向きで切る。
5分で振り返る
①視床下部→下垂体(LH・FSH)→卵巣(エストロゲン・プロゲステロン)→負のフィードバック。②卵巣を失うとエストロゲン・プロゲステロンは低下し、LH・FSHは上昇する。③テストステロンも卵巣由来分が減り低下。④『下位が下がれば上位が上がる』は甲状腺・副腎でも同じ。⑤若年の両側卵巣摘出は外科的閉経で症状が強い。⑥長期には骨粗鬆症と心血管リスク。
1分チェック
- 両側卵巣摘出後に上がるホルモンは。→ LHとFSH(負のフィードバックが外れるため)。
この問題に対応する教材の確認中です。