後天性の大動脈弁狭窄症 aortic stenosis について正しいのはどれか。2つ選べ。
公式正答:2・4
解説
後天性の大動脈弁狭窄症について正しいものを2つ問う。弁尖の石灰化によることと、収縮期に心雑音を聴取することである。
この問題で問われていること
弁の狭窄がもたらす血行動態と、心雑音のタイミングを導けるか。
しくみから理解する
後天性の大動脈弁狭窄症は、加齢に伴う弁尖の変性と石灰化によるものが最も多い。動脈硬化と同様の機序が関わるとされ、高齢化に伴い増加している。狭窄した弁を通って血液を送り出すため、左心室は高い圧を発生させる必要があり、圧負荷に対して求心性肥大(壁が厚くなる)を起こす。心雑音は、左心室が収縮して狭い弁口を血液が通過するときに生じるため、収縮期雑音となる。第2肋間胸骨右縁を最強点とし、頸部へ放散する駆出性の雑音が特徴になる。
選択肢ごとの確認
二尖弁が多いのは先天性(先天性大動脈二尖弁)の場合である。二尖弁では、通常より早い時期(中年期)に狭窄が進行する。設問は後天性を問うており、後天性では加齢による石灰化が最多になる。
左室壁は薄くなるのではなく厚くなる。圧負荷に対して心筋が肥大する求心性肥大である。壁が薄くなる(遠心性の拡大)のは、大動脈弁閉鎖不全や僧帽弁閉鎖不全のような容量負荷が続いた場合や、拡張型心筋症である。
心筋の酸素消費量は増加する。肥大した心筋量が増え、収縮時に高い圧を発生させるため需要が増える。一方で、肥大した心筋への血流供給は相対的に不足し、また拡張期の冠血流も妨げられるため、冠動脈に狭窄がなくても狭心症を生じうる。需要と供給の両面から虚血に陥りやすい。
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混同しやすいポイント
弁膜症は、狭窄か閉鎖不全か、どの弁かによって、負荷の種類(圧負荷か容量負荷か)と雑音のタイミングが決まる。大動脈弁狭窄=収縮期雑音・圧負荷・求心性肥大。大動脈弁閉鎖不全=拡張期雑音・容量負荷・遠心性拡大。僧帽弁狭窄=拡張期雑音。僧帽弁閉鎖不全=収縮期雑音。血液がどちらへ流れるときに狭い所や漏れを通るかを考えれば、雑音の時期は導ける。
理解を深める
大動脈弁狭窄症の三徴は、狭心痛、失神、心不全である。これらの症状が出現すると予後が急速に悪化し、無症状の期間は長いが、症状発現後は数年以内に死亡しうるとされる。したがって症状の出現は手術の重要な判断材料になる。失神は、労作時に末梢血管が拡張しても心拍出量を増やせないために起こる。治療は、人工弁置換術、あるいは高齢者や手術リスクの高い症例では経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI)が行われる。看護では、症状の出現に注意し、過度の労作を避けるよう指導する。また、前負荷を減らす薬剤(硝酸薬、利尿薬)や末梢血管拡張薬は、心拍出量をさらに低下させて血圧が急落する危険があるため、投与時の観察が重要になる。脱水も同様の理由で危険である。人工弁置換後は、抗凝固療法(機械弁では生涯)の管理、感染性心内膜炎の予防(歯科処置前の抗菌薬)、弁の音や機能の観察が継続する。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢が先天性の特徴、肥大の方向の逆、酸素消費の逆で構成されている。圧負荷という機序から導く。
5分で振り返る
①後天性の原因は加齢に伴う弁尖の変性と石灰化。②先天性では二尖弁が背景になる。③圧負荷により左室は求心性肥大(壁が厚くなる)。④収縮期雑音、第2肋間胸骨右縁で最強、頸部へ放散。⑤心筋酸素消費は増加し、冠動脈に狭窄がなくても狭心症を生じうる。⑥三徴は狭心痛・失神・心不全で、症状が出ると予後が急速に悪化する。⑦硝酸薬・利尿薬・脱水で血圧が急落しうる。
1分チェック
- 後天性大動脈弁狭窄症の原因と雑音は。→ 弁尖の石灰化、収縮期雑音(第2肋間胸骨右縁、頸部へ放散)。
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