高齢者における感覚器の変化の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。
公式正答:2・4
解説
高齢者における感覚器の変化の特徴で正しいものを2つ問う。痛覚の感受性が低下することと、暗順応が低下することである。
この問題で問われていること
加齢による変化の方向を、感覚ごとに正確に把握しているか。
しくみから理解する
加齢に伴い、末梢神経の伝導速度の低下と、皮膚の感覚受容器の減少により、痛覚の感受性が低下する。その結果、心筋梗塞でも胸痛を訴えない(無痛性心筋梗塞)、腹膜炎でも腹痛が軽い、熱傷や褥瘡に気づくのが遅れる、といったことが起こる。症状が軽いことが重症でないことを意味しない、という点で臨床上きわめて重要になる。暗順応は、明るい所から暗い所へ移ったときに目が慣れる働きで、加齢により水晶体の混濁と網膜の感度低下が生じるため、時間がかかるようになる。夜間の移動やトイレでの転倒の一因になる。
選択肢ごとの確認
高音域の聴力から低下する。加齢性難聴は、蝸牛の基底回転(高音を感知する部位)の有毛細胞から障害されるため、高い音が聞き取りにくくなる。会話では、子音(サ行、カ行、タ行など高周波成分を含む)の聞き分けが難しくなり、『聞こえてはいるが何を言っているか分からない』という状態になる。
味覚の閾値は上昇する(感じにくくなる)。味蕾の数の減少、唾液分泌の低下、薬剤の影響、亜鉛不足などが関わる。とくに塩味の閾値が上がりやすく、味付けが濃くなって食塩摂取量が増える一因になる。閾値が低下するとは感じやすくなることを意味するので、方向が逆である。
嗅覚も低下する。嗅細胞の減少と再生能力の低下による。嗅覚の低下は、食欲の低下(風味は嗅覚に大きく依存する)、ガス漏れや焦げたにおいに気づかないことによる事故、腐敗した食品の摂取につながる。パーキンソン病やアルツハイマー病では、運動症状や記憶障害に先行して嗅覚が低下することが知られている。
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混同しやすいポイント
『閾値が上がる=感じにくくなる』という関係を取り違えないことが要点になる。加齢では、多くの感覚で閾値が上がり、感受性は低下する。選択肢3は『味覚の閾値が低下する』と書いており、感じやすくなるという意味になるため誤りになる。用語の向きに注意して読む。また選択肢1と5は、いずれも『保たれる』としており、加齢で低下するものを保たれると述べている点で誤りになる。
理解を深める
感覚の低下は、生活の安全と質の両方に関わる。視覚では、老視(近くが見えにくい)、白内障による羞明とかすみ、視野の狭窄、明暗順応の遅れ、コントラスト感度の低下が起こる。段差の見分けがつきにくくなるため、床と壁の色のコントラスト、十分な照明、まぶしさを避ける工夫が有効になる。聴覚では、正面から、ゆっくり、低めの声で、静かな環境で話す。味覚と嗅覚の低下は、食事の楽しみを損ない、低栄養につながる。だしや香辛料、酸味、温度差、彩りを使って、塩分に頼らずに満足感を高める工夫がある。触覚と痛覚の低下では、湯たんぽや電気毛布による低温熱傷、褥瘡、外傷の発見の遅れに注意する。看護師は、高齢者の訴えが乏しいことを『症状がない』と読まず、他覚的な所見(バイタルサイン、皮膚、食欲、活動、意識)から異常を捉える視点を持つ必要がある。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢が『保たれる』と閾値の向きの誤りで構成されている。加齢による変化の方向で切る。
5分で振り返る
①痛覚の感受性は低下(無痛性心筋梗塞、熱傷や褥瘡の発見の遅れ)。②暗順応は低下し夜間の転倒につながる。③聴力は高音域から低下し、子音の聞き分けが難しくなる。④味覚の閾値は上昇(感じにくくなる)、とくに塩味。⑤嗅覚も低下し、食欲低下やガス漏れの見落としにつながる。⑥『閾値が上がる=感じにくい』の向きに注意。⑦訴えが乏しいことを症状がないと読まない。
1分チェック
- 高齢者の痛覚と暗順応はどうなるか。→ どちらも低下する(痛みを訴えにくく、暗さに慣れにくい)。
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