次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(88歳、男性)は妻(82歳)と2人で暮らしている。息子2人は独立して生活している。要介護度は5で、エアマットレスを使用している。食事は妻の介助で1日1回ペースト食を食べているがむせることもあり、食事が全くとれない日もある。排泄はオムツを使用し、毎日訪問介護サービスを利用して、オムツ交換と陰部洗浄を受けている。訪問看護は週3回利用している。Aさんは妻が話しかけると返事はするが自発的な会話はない。着替えをするときに上肢を動かすと苦痛表情がある。
A さんの家族への助言で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
要介護5、1日1回のペースト食でむせることもあり、食事が全くとれない日もある88歳男性の家族への助言を問う。食事を摂取できないときにも口腔ケアを実施することである。
この問題で問われていること
食べていない口腔で何が起こるかを理解しているか。
しくみから理解する
食事をとらないと口腔内は自浄されにくくなる。咀嚼と嚥下による唾液の分泌が減り、食物と舌の動きによる機械的な清掃も行われないため、細菌が増え、痰や剥離した粘膜が乾燥して固着する。この状態で唾液を誤嚥すると、多量の細菌が気道へ入り、誤嚥性肺炎を起こす。つまり、食べていないときこそ口腔ケアが必要になる。加えて、口腔内の乾燥は不快感と痛みをもたらし、口腔ケアそのものが唾液の分泌を促し、口の感覚を刺激して、経口摂取の可能性を保つことにもつながる。
選択肢ごとの確認
体位変換を2時間ごとにという一律の助言は適切でない。この事例ではエアマットレスを使用しており、体圧が分散されているため、間隔を延ばせる。むしろ、上肢を動かすと苦痛表情があることから、頻回な体位変換は苦痛を増やしうる。終末期に近い時期には、褥瘡の予防と安楽のバランスを考え、その人に合った間隔と方法を決める。
関節可動域訓練を週1回では頻度が足りず、また上肢の動きに苦痛がある状態では、まず痛みの評価と緩和が先になる。痛みを伴う訓練を続けると、ケア全体への拒否につながる。
ペースト食を1日3回にすることは、むせがあり食べられない日もある状態では現実的でなく、誤嚥のリスクを高める。回数を増やすより、一回ごとに安全に食べられる条件(覚醒、姿勢、一口量、食形態、時間帯)を整えることが優先される。介護する妻の負担も考慮する必要がある。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも一般的なケアの内容だが、この事例の条件(エアマットレス使用、上肢の動きに苦痛、むせがあり食べられない日もある、介護者は82歳の妻)に照らすと適切でない。事例文に書かれた条件を、助言の妥当性を判断する材料として使うことが要点になる。一律の教科書的な助言ではなく、この人と家族に合うかを考える。
理解を深める
口腔ケアの方法としては、食事の有無にかかわらず1日数回行う。乾燥している場合は、いきなり擦らず、保湿剤やスポンジブラシで湿らせて汚れを軟らかくしてから除去する。誤嚥を防ぐため、可能なら座位または側臥位とし、顔を横に向け、少量の水で行い、吸引を併用する。口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症を減らすことは複数の研究で示されており、終末期であっても続ける意義がある。この事例では、介護者が82歳の妻であり、毎日の介護に加えて手技を求めることの負担を考える必要がある。訪問看護の際に一緒に行って手技を確認する、訪問介護の内容に組み込む、簡便な用具を使う、といった工夫で、続けられる形にする。要介護5で食事量が減り、傾眠が増えている経過は、看取りが近づいていることを示唆する。家族には、この時期に食べられなくなるのは自然な経過であること、無理に食べさせることが苦痛や誤嚥につながりうることを、時間をかけて伝えていく。
間違えやすい考え方
『適切な助言』を問う型で、誤肢が一律の教科書的な内容である。事例の条件に照らして切る。
5分で振り返る
①食べないと唾液分泌と機械的清掃が減り、口腔内の細菌が増える。②唾液の誤嚥で肺炎を起こすため、食べていないときこそ口腔ケアが要る。③乾燥した汚れは保湿してから除去する。④座位か側臥位、顔を横に、少量の水、吸引を併用。⑤エアマットレス使用時は体位変換の間隔を延ばせる。⑥上肢の動きに苦痛があるならまず疼痛評価。⑦終末期に食べられなくなるのは自然な経過。
1分チェック
- 食べられないときの口腔ケアはどうするか。→ 食べていないときこそ実施する(自浄作用が働かず誤嚥性肺炎の原因になる)。
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