次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(88歳、男性)は妻(82歳)と2人で暮らしている。息子2人は独立して生活している。要介護度は5で、エアマットレスを使用している。食事は妻の介助で1日1回ペースト食を食べているがむせることもあり、食事が全くとれない日もある。排泄はオムツを使用し、毎日訪問介護サービスを利用して、オムツ交換と陰部洗浄を受けている。訪問看護は週3回利用している。Aさんは妻が話しかけると返事はするが自発的な会話はない。着替えをするときに上肢を動かすと苦痛表情がある。
2か月後、A さんは食事を口から食べることができなくなり、かかりつけの医 師から家族へ、そろそろ看取りの時期であり、看取りの場所を決めるように説明が あった。息子たちから「父が長年住んだ家で最期まで過ごさせてあげたいと母とも 話していますが、母が1人でみるのは大変だと思い心配しています」と訪問看護師 に話があった。 このときの訪問看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
看取りの時期と説明され、息子たちから「父を長年住んだ家で最期まで過ごさせたいが、母が1人でみるのは大変だと思い心配」と相談された訪問看護師の対応を問う。看取りまでの支援体制を説明することである。
この問題で問われていること
家族の不安の中身を読み取り、それに応える情報を提供できるか。
しくみから理解する
息子たちが述べているのは、二つの内容である。家で看取りたいという希望と、82歳の母が一人で介護することへの心配である。つまり、希望は明確で、障害は介護体制にある。したがって必要なのは、その障害を取り除けるかどうかの情報、すなわち看取りまでにどのような支援が受けられるかの説明になる。訪問診療、訪問看護の増回と24時間対応、訪問介護、福祉用具、緊急時の連絡体制、そして看取りの場面で何が起こり誰に連絡すればよいかを具体的に伝えることで、家族は現実的に判断できるようになる。
選択肢ごとの確認
血圧が低下したら入院が必要という説明は誤りである。看取りの過程では、血圧の低下、脈の触れにくさ、呼吸の変化、意識の低下が自然に起こる。これらは治療の対象ではなく、経過として想定されるものである。入院が必要と伝えれば、家で看取るという選択自体が成り立たなくなる。むしろ、こうした変化が起こることを事前に伝えておくことが、家族の不安を減らす。
看取りの場所は変更できると伝えるべきである。一度決めても、家族の状況や本人の状態、介護者の疲労によって変わりうる。変更できないと伝えれば、家族は決断できなくなるか、後で追い詰められる。いつでも相談でき、方針を変えられることを保証することが、在宅を選ぶ支えになる。
治療方法を医師と看護師だけで決めることは適切でない。本人の意向と家族の考えを中心に、医療・ケアチームで話し合って決める。この事例では本人の意思確認が難しい状態にあるため、家族が本人の意向を推定できるよう支援しながら、共に決めていく。
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混同しやすいポイント
誤肢は、家族の選択肢を狭める方向を向いている。入院が必要と言う、変更できないと言う、専門職だけで決める。いずれも、家族が主体的に選ぶことを妨げる。在宅看取りの支援では、選べる状態を保つこと、いつでも相談でき方針を変えられることが、決断を可能にする。
理解を深める
在宅での看取りを支える体制としては、訪問診療(定期的な往診と24時間の連絡体制、死亡診断)、訪問看護(症状の緩和、家族への指導と支援、24時間対応、看取り時の対応)、訪問介護(身体介護と生活援助)、福祉用具(介護用ベッド、エアマットレス、吸引器)、そして必要に応じたレスパイト(短期入所)がある。家族には、亡くなる前に起こる変化(食べられなくなる、傾眠が増える、尿量が減る、呼吸のリズムが変わる、手足が冷たくなり色が変わる、死前喘鳴)を事前に伝えておく。何が起きているか分かっていれば、慌てずに過ごせる。また、呼吸が止まったときに救急車を呼ぶ必要はなく、まず訪問看護師や医師に連絡すればよいことを、明確に伝えておく。これを伝えていないために救急搬送となり、本人と家族の望まない最期になる事例は少なくない。介護者である妻自身の健康と休息も、支援の対象になる。息子たちが遠方にいても、電話や訪問で関われることを一緒に考える。
間違えやすい考え方
『適切な対応』を問う型で、誤肢が家族の選択肢を狭める方向である。不安の中身に応える情報かで切る。
5分で振り返る
①家族の不安の中身は介護体制、それに応える情報を具体的に提供する。②訪問診療・訪問看護の24時間対応・訪問介護・福祉用具・レスパイトを説明する。③血圧低下や呼吸の変化は看取りの自然な経過で入院を要さない。④看取りの場所は変更できると保証する。⑤治療方針は本人と家族を中心にチームで決める。⑥亡くなる前の変化を事前に伝える。⑦呼吸が止まったら救急車ではなく訪問看護師か医師へ連絡する。
1分チェック
- 在宅看取りに不安を訴える家族に何を伝えるか。→ 受けられる支援体制を具体的に説明する(選べる状態を保つ)。
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