次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(80歳、女性)は、アパートの1階に1人で暮らしている。半年前に軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症Alzheimerdiseaseと診断され、抗認知症薬の内服治療を開始した。要支援2の認定を受けている。Aさんが屋内でぐったりしているのを訪問した近所の人が発見し、救急搬送された。来院時のバイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数20/分、脈拍92/分、血圧130/82mmHgで、皮膚に軽度の発汗がみられた。頭痛や吐き気はなかった。看護師がAさんに状況を聞くと、最近は食欲がなく、食べたり飲んだりしていなかったし、昨日は排尿回数も普段より少なかったと話した。
このときに看護師が追加で収集する情報で優先度が高いのはどれか。
公式正答:2
解説
アルツハイマー型認知症のある80歳女性が屋内でぐったりしているのを発見され搬送された。食欲がなく食べたり飲んだりしておらず、前日の排尿回数も少なかったという場面で、追加で収集する情報を問う。口渇の有無である。
この問題で問われていること
推定される病態(脱水)を確かめるための情報を選べるか。
しくみから理解する
経口摂取の不足と尿量の減少という情報から、脱水が強く疑われる。脱水を評価する情報として、口渇の有無は直接的で重要な指標になる。ただし高齢者では、口渇中枢の感受性が低下しており、体液が不足していても口渇を自覚しにくいという特徴がある。したがって、口渇があれば脱水を裏づける所見になり、なくても脱水を否定できない、という二重の意味で確認する意義がある。あわせて、口腔粘膜の乾燥、腋窩の乾燥、皮膚のツルゴールの低下、体重の減少、尿の濃縮といった他覚的な所見を組み合わせて評価する。
選択肢ごとの確認
睡眠状況も高齢者のアセスメントとして重要だが、今の急性の状態(ぐったりしている)を説明する情報にはならない。優先度は下がる。
ADLの状況は、退院支援や在宅生活の継続を考えるうえで必要な情報である。ただし今の時点で優先されるのは、急性の病態を明らかにすることであり、生活機能の評価はその後になる。
抗認知症薬の内服状況は、確認すべき情報である。認知症のある独居高齢者では、服薬の管理が困難になっていることが多い。しかし、今のぐったりした状態を説明する第一の仮説は脱水であり、それを確かめる情報が優先される。なお、抗認知症薬の副作用として食欲不振や消化器症状が生じることもあり、経過の中では確認する。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも、この患者について収集すべき情報である。判断の軸は、今の急性の状態を説明する仮説(脱水)を確かめられるかにある。事例文が、食事と水分の摂取不足、尿量の減少、発汗、頻脈気味という所見を並べているのは、脱水を示唆するためである。それらと同じ方向の情報を追加で集める、という流れになる。
理解を深める
高齢者は脱水を起こしやすい。体内の水分の割合が若年者より少ない(およそ50%)、口渇中枢の感受性が低下している、腎の尿濃縮力が低下している、食事量が減ると食事由来の水分も減る、トイレの回数を減らそうとして水分を控える、利尿薬を服用していることがある、といった要因が重なる。認知症があると、水分をとったかどうかを覚えていない、飲む行為そのものを忘れる、飲みたいと伝えられないといった問題も加わる。脱水は、意識障害、せん妄、転倒、脳梗塞、腎前性腎不全、熱中症の引き金になる。評価では、体重の変化(最も鋭敏)、口腔と腋窩の乾燥、皮膚のツルゴール(高齢者では皮膚の弾力が元々低下しているため前胸部や前額で見る)、尿の色と量、血圧の起立性変動、血液検査(ヘマトクリット、血清ナトリウム、尿素窒素とクレアチニンの比)を組み合わせる。予防としては、時間を決めて飲む習慣、飲みやすい容器と温度、水分を含む食品(ゼリー、果物、汁物)の活用、周囲の声かけがある。
間違えやすい考え方
『追加で収集する情報』を問う型で、誤肢もすべて必要な情報である。今の状態を説明する仮説を確かめられるかで切る。
5分で振り返る
①経口摂取の不足+尿量の減少は脱水を強く示唆する。②口渇の有無は直接的な指標だが、高齢者は口渇中枢の感受性が低下し自覚しにくい。③他覚的所見=口腔と腋窩の乾燥、皮膚のツルゴール、体重減少、尿の濃縮。④体重の変化が最も鋭敏。⑤高齢者は体内水分が少なく腎濃縮力も低下、認知症があるとさらに起こりやすい。⑥脱水は意識障害・せん妄・転倒・脳梗塞・腎前性腎不全を招く。
1分チェック
- 経口摂取不足と尿量減少から何を疑い、何を聞くか。→ 脱水を疑い、口渇の有無を確認する。
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