次の文を読み、問いに答えよ。A君(12歳、男児)は、肥満を心配した保護者に連れられて来院した。A君と保護者は、医師から「1日の食事内容を毎日記録し、1週後に再診してください」と説明された。既往歴と家族歴:特記すべきことはない。生活歴:スナック菓子などの間食を好む。時間があればポータブル型のゲーム機でサッカーゲームばかりして、就寝時刻は毎晩午前0時を過ぎる。A君は、学校生活は楽しく思っているが朝起きられず遅刻して登校することが多い。また、運動することが嫌いなため運動の習慣はない。身体所見:身長153.0cm(標準152.4cm)、体重61.7kg(標準44.1kg)。血圧100/60mmHg。心音と呼吸音に異常はない。腹部は平坦、軟で、肝臓と脾臓を触知しない。
A 君の保護者は「この機会に、A の生活リズムの乱れも改善したいと思います。 どんなことから始めるのが良いですか」と看護師に尋ねた。 看護師の説明で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
就寝が午前0時過ぎで朝起きられず遅刻が多い12歳男児について、保護者から生活リズムの改善は何から始めればよいかと尋ねられた場面での説明を問う。「起床したら朝日を浴びると良いでしょう」である。
この問題で問われていること
生体リズムの調整の機序を理解し、実行しやすい方法を選べるか。
しくみから理解する
体内時計は視交叉上核にあり、その周期は24時間よりわずかに長い。これを毎日24時間へ合わせる(同調させる)最も強い因子が、朝の光である。網膜から入った光の情報が視交叉上核へ伝わり、位相が前進して、夜に眠気が来る時刻が早まる。また朝の光を浴びてからおよそ14〜16時間後にメラトニンの分泌が始まるため、朝の光の時刻が夜の入眠時刻を決めることになる。夜に眠ろうと努力するより、朝の光を浴びることのほうが、生活リズムを整える方法として確実で、実行しやすい。
選択肢ごとの確認
ゲームを禁止することは、本人の楽しみを一方的に奪う対応であり、反発を招いて継続しにくい。夜間の画面の光(とくに短波長光)が入眠を妨げることは事実なので、就寝前の時間帯を決める、部屋の明るさを落とす、といった調整が現実的になる。禁止よりルールを一緒に決めるほうが実行できる。
サッカークラブへの所属は、運動の習慣という点では有益に見えるが、本人は運動が嫌いだと述べている。嫌いなことを課しても続かず、失敗体験になる。まずは日常生活の中で体を動かす機会を増やし、本人が楽しめる活動を探すほうが現実的である。
学校を休ませることは、学校生活を楽しいと感じている本人にとって不利益であり、社会的な生活リズムの手がかり(登校時刻、給食、活動)を失わせて、かえってリズムを乱す。不登校のきっかけにもなりうる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、禁止する、嫌いなことを課す、社会生活から切り離す、という3つの方向で、いずれも本人の実行可能性と生活の質を損なう。生活習慣の改善では、本人が続けられるかどうかが決定的になる。朝の光を浴びるという方法は、費用がかからず、特別な準備も要らず、機序も明確で、最初の一歩として優れている。
理解を深める
生活リズムを整える具体策としては、朝の光を浴びる(起床後30分以内にカーテンを開ける、屋外に出る)、起床時刻を一定にする(休日も大きくずらさない)、朝食をとる(消化管の時計を同調させる)、日中に体を動かす、夕方以降のカフェインを避ける、就寝前の入浴は就寝の1〜2時間前に済ませる、寝室を暗く静かに保つ、就寝前の画面の使用時間を決める、といった内容になる。この事例では、遅い就寝と朝の遅刻が悪循環になっており、加えて肥満の問題も重なっている。睡眠不足は、食欲を増すホルモン(グレリン)を増やし、抑えるホルモン(レプチン)を減らすため、肥満を悪化させる方向に働く。逆に、生活リズムが整えば、日中の活動量が増え、間食の機会が減ることも期待できる。学童期から思春期にかけては、生理的にも入眠時刻が後ろへずれやすい時期であり、本人の努力不足として責めない姿勢が重要になる。保護者だけでなく本人と一緒に、何から始められるかを相談する形が続きやすい。
間違えやすい考え方
『適切な説明』を問う型で、誤肢が禁止・嫌いなことの強制・社会からの切り離しである。実行可能性と機序で切る。
5分で振り返る
①体内時計の周期は24時間より長く、朝の光が最も強い同調因子。②朝の光を浴びてから14〜16時間後にメラトニンが分泌され眠気が来る。③夜に眠る努力より朝の光のほうが確実。④禁止・強制・学校を休ませることは実行可能性と生活の質を損なう。⑤起床時刻を一定にし、朝食をとり、日中に活動する。⑥睡眠不足はグレリンを増やしレプチンを減らして肥満を悪化させる。⑦思春期は生理的に入眠が遅れやすく、本人を責めない。
1分チェック
- 生活リズムを整える最初の一歩は。→ 起床後に朝日を浴びる(体内時計を24時間へ同調させる)。
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