A さん(89 歳、女性)は災害によって自宅が損壊し、避難所で生活を始めた。看 護師が面談を行うと「食欲がない。横になっても眠れず、すぐに目が覚めてしまう」 と話し、元気がない様子である。避難所ではトイレと食事以外はほとんど動かずに 過ごしている。A さんには被災前の通院歴はなく、日常生活動作〈ADL〉は自立し ている。 看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
公式正答:3
解説
避難所で食欲不振と不眠を訴え、ほとんど動かずに過ごしている高齢女性への対応を問う。軽い運動ができるように環境を整えることである。
この問題で問われていること
災害後の反応を正常な反応として捉えつつ、生活不活発病の予防という視点で支援を選べるか。
しくみから理解する
災害後、環境の急変と喪失体験により食欲低下や不眠は災害後に多い反応だが、持続期間、重症度、生活機能、自殺念慮、せん妄、身体疾患を評価し、正常範囲と決めつけない。この人はさらに、避難所でトイレと食事以外ほとんど動かずに過ごしており、活動量の著しい低下がある。高齢者が避難所で動かない状態が続くと、数日から数週で筋力低下、関節拘縮、深部静脈血栓症、認知機能の低下が進む(生活不活発病)。これは災害関連死につながる要因でもあるため、体を動かす機会を作ることが優先度の高い支援になる。運動は睡眠の質を改善し、食欲の回復にもつながるため、訴えられている症状にも同時に働きかけられる。
選択肢ごとの確認
励ましは、すでに限界まで努力している被災者にとって重荷になり、つらさを訴えられなくする。心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)でも避けるべき対応とされる。
提示情報だけで入院適応は確定できない。自殺念慮、せん妄、著しい機能低下、身体疾患、既往症の悪化を評価し、必要な支援強度を判断する。過剰な医療化は本人の生活を分断し、災害時の限られた医療資源の配分としても適切でない。
薬物療法を最初の手段にすべきではない。高齢者では睡眠薬によるふらつきと転倒、せん妄のリスクがある。まず環境調整と活動の確保という非薬物的な対応を行い、それでも改善しない場合に検討する。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
『症状があるから治療につなぐ』という反射的な発想が誤肢2・4を選ばせる。災害後の初期には、症状を病気として扱う前に、生活環境の改善と支持的な関わりを行いつつ、症状の経過、機能低下、安全リスクを評価する。正常な反応と一律に保証しない。ただし、自傷他害の危険、極度の混乱、既往の精神疾患の悪化がある場合は速やかに専門的支援につなぐ、という線引きは持っておく。
理解を深める
避難所の環境整備には、プライバシーの確保(間仕切り)、寝床の改善(段ボールベッドで床からの冷えと粉塵を避ける)、トイレの数と清潔、食事の栄養バランス、感染対策、そして体を動かせるスペースの確保がある。生活不活発病の予防として、ラジオ体操や集団での軽い運動、役割を持ってもらうこと(配膳、片付けの手伝い)が有効で、これは活動量を増やすと同時に、被災者を受け身の存在にしない意味も持つ。深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)は車中泊で特に問題となり、水分摂取と足の運動を促す。DPAT(災害派遣精神医療チーム)は精神科医療の提供と地域の精神保健活動の支援を担う。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が『励まし』『医療化』『薬』という、一見親身にも積極的にも見える対応で構成されている。災害看護の原則(生活の立て直しを支える、正常な反応を病気にしない)を持っていないと迷う。
5分で振り返る
①災害後の食欲低下・不眠は正常なストレス反応。②高齢者は生活不活発病が急速に進む。③まず環境調整と活動の確保、薬は最初の手段でない。④『頑張って』は避ける。⑤DVT予防に水分と足の運動。⑥危険徴候があれば専門的支援へつなぐ。
1分チェック
- 避難所で動かない高齢者にまず何をするか。→ 体を動かせる環境を整える(生活不活発病の予防)。
この問題に対応する教材の確認中です。