次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(56歳、男性、会社員)はthoracicesophagealcancer胸部食道癌と診断され、開胸開腹下で食道切除再建術を受けることになった。病状と手術の説明を聞き「酒もほとんど飲まないのに、esophagealcancer食道癌になっちゃうんですね」と落ち込んだ様子で「早くよくなりたい。20歳から毎日20本吸っていたタバコも手術が決まってやめました」と話した。身体所見:身長168cm、体重54kg、BMI19。血液所見:Hb13.6g/dL、Ht41.4%、血小板数28万/μL、プロトロンビン時間11秒、総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.8g/dL、空腹時血糖102mg/dL、HbA1c4.8%。呼吸機能所見:%VC78%、FEV1%67%。
A さんは術後5 日に経口摂取が開始となり、流動食、粥食を経て、術後2 週に は普通食を1 日6 回に分けて食べるようになった。食事については「すぐおなかが いっぱいになって、入っていかない感じなんだよね。食べ物を少しずつ口に入れる 習慣がついたな」と言いながら、各食50~70 % を摂取していた。 A さんの退院時の食事指導で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
食道切除再建術後2週で普通食を1日6回に分けて摂取している患者への食事の説明を問う。よくかんでから飲み込むよう伝えることである。
この問題で問われていること
再建された消化管の解剖学的な変化から、食べ方の指導を導けるか。
しくみから理解する
胃を用いた食道再建では、胃を細長い管状(胃管)にして頸部まで挙上し、食道の断端と吻合する。その結果、胃の容量は大幅に減り、噴門の逆流防止機構も失われる。さらに、迷走神経が切離されるため胃の蠕動と幽門の機能も低下する。食物を貯めて少しずつ送り出す働きが失われているため、大きな塊のまま飲み込むとつかえや逆流を起こしやすい。したがって、よくかんで細かくし、唾液と混ぜてから飲み込むことが、通過を助け不快感を減らす基本になる。
選択肢ごとの確認
逆流を助長する。食道と再建胃管には逆流を防ぐ弁がないため、臥位になると胃内容が容易に逆流し、胸やけや、就寝中であれば誤嚥性肺炎の原因になる。食後は30分〜1時間程度、坐位または上体を挙上した姿勢を保つ。
1回に食べられる量が減っているため、3食にまとめると必要量を摂れず、また1回量が多くなってつかえやダンピング症状を招く。分割食(1日5〜6回)を続けることが推奨される。この患者はすでに6回に分けて食べており、その方法を否定することになる。
液体で流し込むと、十分に咀嚼されないまま大きな塊が送られ、つかえや逆流、誤嚥の原因になる。また水分で満腹になり食事量が減る。咀嚼を十分に行うことで対応する。
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混同しやすいポイント
術後の食事指導は、解剖の変化から導ける。容量が減った→分割食、逆流防止機構がない→食後の姿勢、蠕動が低下している→よくかむ、という対応関係である。一般的な健康指導(3食きちんと、食後は休む)をそのまま当てはめると全部誤りになる点が、この設問の仕掛けである。
理解を深める
食道切除後の合併症として、ダンピング症候群がある。早期ダンピング(食後30分以内)は、高浸透圧の食物が急速に腸へ流入して腸管に体液が移動することで、腹痛、下痢、動悸、冷汗、めまいを生じる。後期ダンピング(食後2〜3時間)は、急激な糖の吸収に対しインスリンが過剰に分泌され、反応性の低血糖を起こす。対策は、ゆっくりよくかんで食べる、1回量を減らし回数を増やす、糖質に偏らない、食事中の水分を控えめにする、食後に少し横になる(早期ダンピングの場合)などで、後期ダンピングには少量の糖分を携帯して対応する。体重減少は術後長期にわたる課題で、栄養士と連携した継続的な支援が必要になる。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が一般的には正しく聞こえる助言で構成されている。この患者の解剖がどう変わったかを起点に判断する。
5分で振り返る
①胃管再建で容量が減り、逆流防止機構と蠕動が失われる。②よくかんで唾液と混ぜてから飲み込む。③分割食(1日5〜6回)を続ける。④食後30分〜1時間は坐位を保つ、すぐ横にならない。⑤液体で流し込まない。⑥早期・後期ダンピング症候群に注意。
1分チェック
- 食道切除再建後の食べ方の基本は何か。→ よくかんで飲み込む(分割食・食後は坐位)。
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