次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(33歳、初妊婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。身長160cm、非妊時体重60kg。妊娠17週1日の妊婦健康診査にて、児の発育に異常はなかった。体重は66kgで4週前から4kg増加している。血圧120/78mmHg。尿蛋白(-)、浮腫(-)。排便は妊娠前と変わらず2日に1回出ている。Aさんは「同じ週数の友達は胎動を感じると言っていたのに、自分は感じられず心配です」と話す。
このときのA さんの状態で正常から逸脱しているのはどれか。
公式正答:3
解説
妊娠17週1日の初妊婦について、正常から逸脱している所見を問う。体重の増加量である。
この問題で問われていること
妊娠期の正常な経過を数値で把握し、逸脱を判断できるか。
しくみから理解する
非妊時の体重60kg、身長160cmからBMIは約23.4となり、日本の基準では普通体重(18.5以上25.0未満)に該当する。この区分での妊娠全期間の体重増加指導の目安は10〜13kgになる。現行の目安は全期間の増加量で示され、週あたりの増加量の表は引き継がれていない。この妊婦は4週間で4kg増加しており、妊娠17週の時点で既に全期間の目安の3分の1以上に達している。この増え方は目安を大きく上回り、正常からの逸脱にあたる。増え方の評価は、浮腫、血圧、摂取量、児の発育と合わせて個別に行う。急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、巨大児、難産のリスクを高める。
選択肢ごとの確認
120/78mmHgは正常範囲である。妊娠高血圧症候群は収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上で診断されるため、該当しない。
2日に1回で妊娠前と変わらない。妊娠中はプロゲステロンによる腸蠕動の低下と子宮による圧迫で便秘になりやすいが、この妊婦は妊娠前と同じ排便習慣が保たれており問題ない。
初産婦が胎動を自覚するのは妊娠18〜20週頃で、経産婦ではやや早く16週頃からとされる。17週1日で初産婦が自覚していないことは正常の範囲であり、逸脱ではない。友人と比べて不安を感じている点には説明と保証が必要である。
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混同しやすいポイント
初産婦と経産婦で胎動の自覚時期が異なる点が、この設問の仕掛けである。設問文に『初妊婦』と明記されており、これを読めば胎動の無自覚は正常と判断できる。体重については、非妊時のBMIを計算しなければ推奨増加量が決まらない。計算を省くと判断できない。
理解を深める
妊娠中の体重増加の指導では、制限しすぎることの害も知っておく必要がある。過度の体重制限は、低出生体重児のリスクを高め、児の将来の生活習慣病リスクにも関わるとされる(DOHaD仮説)。したがって『増えすぎ』も『増えなさすぎ』も避け、BMI区分に応じた適正な範囲を目指す。急激な増加をみたときは、単なる摂取過多だけでなく、浮腫による体液貯留の可能性も評価する。この妊婦は尿蛋白(−)、浮腫(−)、血圧正常であり、現時点で妊娠高血圧症候群の所見はないが、経過観察と食事・活動の見直しが必要になる。食事内容の聞き取り、間食や飲料の習慣、身体活動量を確認し、実行しやすい調整を一緒に考える。
間違えやすい考え方
『正常から逸脱しているのはどれか』型で、複数の所見が示されている。それぞれの正常範囲を知っていないと判断できない。とくに体重はBMIの計算が前提になる。
5分で振り返る
①非妊時BMIで推奨増加量が決まる(普通体重で10〜13kg)。②現行の指導の目安は全期間の増加量で示され、週あたりの数値は用いない。増え方は浮腫、血圧、摂取量、児の発育と合わせて個別に評価する。③初産婦の胎動自覚は18〜20週、経産婦は16週頃。④妊娠高血圧症候群は140/90mmHg以上。⑤過度の体重制限は低出生体重児のリスク。⑥急激な増加では浮腫の有無も評価する。
1分チェック
- 普通体重の妊婦の体重増加の目安は。→ 妊娠全期間で10〜13kg(現行の目安は全期間で示され、週あたりの数値は用いない。4週で4kgは、17週の時点で目安の3分の1以上にあたり過剰)。
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