次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(24歳、女性)は両親と3人で暮らしている。会社員として働いているが、最近責任の大きな仕事が増えていた。仕事帰りにコンビニエンスストアでサンドイッチやおにぎりなどを買い込み、家族が寝た後に一気に食べるようになった。量が増えていき、食べた後に自ら嘔吐することを繰り返すようになった。過食嘔吐をやめられないことに悩み、クリニックを受診し、bulimianervosa神経性過食症と診断された。来院時の身体所見:身長155cm、体重48kg、体温36.4℃、血圧104/60mmHg、脈拍66/分(不整)。検査所見:赤血球400万/μL、Hb12.5g/dL、白血球6,300/μL、Na135mEq/L、K2.7mEq/L、Cl98mEq/L、AST30IU/L〈U/L〉、ALT35IU/L〈U/L〉、γ-GTP29IU/L〈U/L〉、血糖92mg/dL。
A さんの来院時の所見から考えられるのはどれか。
公式正答:4
解説
自己誘発嘔吐を繰り返す神経性過食症患者の来院時の所見から考えられるものを問う。低カリウム血症である。
この問題で問われていること
検査値を基準値と照合し、症状(脈の不整)と結びつけられるか。
しくみから理解する
K 2.7mEq/Lは基準値(3.5〜5.0mEq/L)を明らかに下回り、低カリウム血症である。自己誘発嘔吐では胃液とともにカリウムと塩素が失われ、また嘔吐による代謝性アルカローシスがカリウムの細胞内移行を促すため、低カリウム血症が生じやすい。低カリウム血症は心筋の興奮性に影響し、期外収縮などの不整脈を起こす。脈拍66/分(不整)という所見は、この電解質異常を反映していると考えられる。重度になると致死性不整脈に至るため、摂食障害では電解質の管理が生命に直結する。
選択肢ごとの確認
赤血球400万/μL、Hb 12.5g/dLはいずれも成人女性の基準範囲内である。貧血はない。
血糖92mg/dLは正常範囲である。神経性やせ症では低血糖をきたすことがあるが、この患者のデータでは示されていない。
AST 30、ALT 35、γ-GTP 29といずれも基準範囲内である。神経性やせ症の重度の低栄養では肝機能障害が生じうるが、この患者にはない。
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混同しやすいポイント
神経性過食症と神経性やせ症を区別する。この患者はBMI約20と体重は保たれており、やせを伴わない。神経性過食症では、体重が正常範囲にあることが多く、外見からは気づかれにくい。一方で、自己誘発嘔吐による電解質異常、齲歯とエナメル質の侵食、唾液腺の腫脹、手背の吐きだこ(Russell徴候)、食道炎といった身体的な問題が生じる。『やせていないから軽症』ではない点が重要である。
理解を深める
低カリウム血症の補正は、原因の除去(嘔吐の頻度を減らす)と並行して行う。急速な静脈内投与は致死性不整脈を招くため、投与速度と濃度に厳格な制限がある。摂食障害では、長期の低栄養状態から急に栄養を投与すると、リフィーディング症候群(低リン血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症、心不全、けいれん)を起こす危険があり、少量から開始して電解質を頻回に測定する。看護では、体重と食行動の記録、電解質と心電図の確認、嘔吐後の口腔ケア(直後の歯磨きはエナメル質を傷めるため含嗽を先に)、そして本人の恥や自責の感情に配慮した関わりが求められる。過食嘔吐は意志の弱さではなく治療を要する疾患であることを、本人にも家族にも伝える。
間違えやすい考え方
所見から病態を判断する型で、複数の検査値が示されている。すべてを基準値と照合し、異常なものを見つける。基準値を覚えていることが前提になる。
5分で振り返る
①嘔吐でカリウムと塩素が失われ、アルカローシスがKの細胞内移行を促す。②K 2.7は低カリウム血症、不整脈の原因になる。③神経性過食症は体重が正常なことが多く気づかれにくい。④身体所見は齲歯・唾液腺腫脹・Russell徴候。⑤補正は速度と濃度に制限あり。⑥リフィーディング症候群に注意。
1分チェック
- 自己誘発嘔吐を繰り返す患者で注意すべき電解質異常は何か。→ 低カリウム血症。
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