A さん(77 歳、男性)は妻(80 歳)と2 人で暮らしている。5 年前に dementia 認知症と診断 された。最近、A さんが妻の介助を拒否し、怒鳴ることが多くなったため、通所 介護を利用するようになった。通所施設の看護師が入浴を勧めると「今日はやめて おく」 「今は忙しくて時間がない」と答えた。 A さんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
認知症のある77歳男性が通所施設で入浴を勧められ「今日はやめておく」と答えた場面での対応を問う。時間をおいてから再度入浴を勧めることである。
この問題で問われていること
拒否という行動の背景を考え、本人の意思を尊重しながら支援を続けられるか。
しくみから理解する
認知症のある人の拒否は、入浴そのものが嫌なのではなく、その時点でのタイミング、体調、気分、状況の理解のしにくさ、羞恥心、担当者との関係など、さまざまな要因で生じる。時間をおくと状況が変わり、受け入れられることが少なくない。一度の拒否で入浴の機会そのものを取り下げてしまうと、清潔が保てず、皮膚トラブルや感染、また入浴という生活習慣の喪失につながる。したがって、無理強いはせず、いったん引いてから改めて誘うという対応が適切になる。
選択肢ごとの確認
一度の拒否で入浴を諦め、方法を変えてしまう対応である。清拭は入浴が困難な場合の代替であって、拒否があったから即座に切り替えるものではない。入浴は清潔だけでなく、血行の促進、リラックス、生活の楽しみという意味も持つ。
設問文からは、浴槽の使い方が分からないために拒否しているという情報は読み取れない。「今は忙しくて時間がない」という言葉からは、状況の理解のしにくさや、そのときの気持ちが背景にあると考えられる。原因を確かめずに説明を重ねても解決しない。
通所介護を利用している背景には、妻の介助を拒否し怒鳴ることが増えたという事情がある。自宅での入浴を勧めることは、介護者である80歳の妻の負担を増やし、通所介護を導入した目的にも反する。
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混同しやすいポイント
認知症のある人への対応の原則は、否定しない、無理強いしない、その人のペースに合わせる、である。拒否の言葉をそのまま受け取って中止するのでも、説得して押し切るのでもなく、いったん受け止めて時間や状況を変えて試みる。この『引いてから再度』という対応は、入浴だけでなく食事、服薬、更衣など多くの場面で応用できる。
理解を深める
認知症の行動・心理症状(BPSD)は、脳の変化そのものよりも、身体的な不調(痛み、便秘、脱水、感染、薬剤)、環境(音、明るさ、慣れない場所)、対人関係(急かされる、否定される)といった誘因によって生じることが多い。したがって対応の出発点は誘因を探すことであり、それを取り除けば症状は和らぐ。入浴に関しては、羞恥心への配慮(同性介助、露出を最小限にする)、脱衣所と浴室の温度差をなくす、手順を一つずつ短い言葉で伝える、本人の生活歴(それまでの入浴の習慣、好きな時間帯)を活かす、といった工夫が有効である。妻への支援としては、介護教室や家族会、レスパイトの利用を案内する。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が『諦める』『説明する』『家族に戻す』と、いずれも問題を先送りする形になっている。本人の意思を尊重しつつ支援を続ける選択肢を選ぶ。
5分で振り返る
①拒否の背景はタイミング・体調・気分・羞恥心など様々。②否定せず無理強いせず、いったん引いて再度誘う。③一度の拒否で方法を変えたり諦めたりしない。④BPSDは身体的不調・環境・対人関係が誘因になる。⑤入浴では同性介助・温度差の解消・短い言葉での説明。⑥介護者への支援も並行する。
1分チェック
- 認知症の人が入浴を拒否したらどうするか。→ 無理強いせず、時間をおいて再度勧める。
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