次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(55歳、男性)は会社の健康診断で便潜血が陽性となった。他の検査項目に異常がなかったため、精密検査を受けなかった。6か月後、妻の強い勧めで病院を受診し「体調に変化がなかったので、仕事を優先していました。たくさん検査を受けないといけないのですね」と話した。Aさんに特記すべき既往歴はない。
A さんは腹腔鏡を用いた気腹法による左半結腸切除術を受けることになった。 入院に付き添ってきた妻は「腸を半分も切ると言われて驚いてしまいました。ずい ぶん切るそうですが、どんな手術になるのかしら」と話した。 A さんの手術について正しいのはどれか。
公式正答:4
解説
腹腔鏡を用いた気腹法による左半結腸切除術について正しいものを問う。二酸化炭素を腹腔内に入れることである。
この問題で問われていること
手術方法の名称から、実際に何が行われるかを説明できるか。
しくみから理解する
腹腔鏡下手術では、腹壁に数か所の小さな穴を開け、そこからカメラと器具を挿入して操作する。しかし腹腔内は臓器が密着しており、そのままでは視野も操作空間もない。そこで気腹法により気体を注入して腹壁を持ち上げ、空間を作る。用いる気体は二酸化炭素で、不燃性であること(電気メスを使うため)、血液に溶けやすく吸収されても呼気から排出されること、万一血管内に入っても空気塞栓のリスクが比較的低いことが理由である。
選択肢ごとの確認
全身麻酔で行う。気腹により横隔膜が挙上されて換気が制限されるため、人工呼吸による管理が必要になる。また長時間の手術で体位変換も伴う。
左半結腸切除術では、横行結腸の左側から下行結腸、S状結腸の一部にかけて切除する。上行結腸は右側にあり、こちらを切除するのは右半結腸切除術である。左右の解剖を取り違えている。
腹腔鏡下手術の利点は創が小さいことである。ポートを挿入する5〜12mm程度の創が数か所と、標本を取り出すためのやや大きな創(数cm程度)で済む。20cmは開腹手術の創である。
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混同しやすいポイント
『左半結腸=左側』という単純な対応を確認できるかが誤肢2の判定になる。大腸は、盲腸・上行結腸が右、横行結腸が上、下行結腸・S状結腸が左に位置する。左半結腸切除では、下行結腸を中心とする左側が切除される。設問文が妻の『腸を半分も切ると言われて驚いた』という言葉から始まっている点も、説明の場面であることを示している。
理解を深める
気腹による生理学的な影響を理解しておくことが看護につながる。腹腔内圧の上昇により横隔膜が挙上して機能的残気量が減り、換気が制限される。下大静脈が圧迫されて静脈還流が減少し、心拍出量が低下することがある。吸収された二酸化炭素により高炭酸ガス血症とアシドーシスが生じうる。また頭低位(骨盤内の操作で用いる)では、顔面の浮腫、眼圧上昇、頭蓋内圧上昇が起こる。術後には、残存した二酸化炭素が横隔膜を刺激して肩の痛み(放散痛)を訴えることがあり、これは異常ではないと説明する。腹腔鏡下手術の利点は、創が小さく疼痛が少ない、回復が早い、入院期間が短い、整容性がよいことで、早期離床がしやすい。
間違えやすい考え方
『正しいのはどれか』型で、誤肢が麻酔法、解剖の左右、創の大きさという3つの側面で誤りを作っている。術式名を分解して理解していれば判定できる。
5分で振り返る
①気腹は二酸化炭素で腹腔を膨らませ視野と操作空間を作る。②CO2は不燃性、吸収されても呼気から排出、塞栓リスクが低い。③全身麻酔で行う(換気管理が必要)。④左半結腸=下行結腸を中心とする左側。⑤創はポート5〜12mmが数か所。⑥術後の肩の痛みは残存CO2による放散痛。
1分チェック
- 気腹法では何を腹腔内に入れるか。→ 二酸化炭素。
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