次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(55歳、男性)は会社の健康診断で便潜血が陽性となった。他の検査項目に異常がなかったため、精密検査を受けなかった。6か月後、妻の強い勧めで病院を受診し「体調に変化がなかったので、仕事を優先していました。たくさん検査を受けないといけないのですね」と話した。Aさんに特記すべき既往歴はない。
A さんは予定通りに手術を受け、順調に経過した。術後4 日、A さんは粥食を 摂取し「退院したら早く仕事に戻りたい。入院したときは、身長176 cm、体重 70 kg だったけれど、入院して2 kg 減った。退院後はどうなるのでしょうか」と 言った。血液検査では、赤血球510 万/μL、Hb 13.8 g/dL、Ht 40 %、白血球 8,200/μL、総蛋白7.0 g/dL、アルブミン5.1 g/dL であった。 A さんへの説明で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
左半結腸切除術後4日、経過良好で退院後の生活を尋ねた患者への説明を問う。下痢をしやすくなることである。
この問題で問われていること
切除された部位の生理機能から、術後に生じる変化を予測できるか。
しくみから理解する
大腸の主な働きは、小腸から送られてきた内容物から水分と電解質を吸収して便を形成することである。上行結腸から横行結腸で水分の多くが吸収され、下行結腸とS状結腸で便が貯留・形成される。左半結腸を切除すると、水分を吸収する面積と、便を貯めて形を整える部分が減るため、便が軟らかくなり、回数が増える。これが下痢傾向として現れる。多くは時間の経過とともに残った大腸が代償して改善するが、術後しばらくは続くため、あらかじめ説明しておくと不安が減る。
選択肢ごとの確認
赤血球510万/μL、Hb 13.8g/dL、Ht 40%といずれも正常範囲であり、貧血はない。また大腸は鉄やビタミンB12の主要な吸収部位ではない(鉄は十二指腸〜空腸、ビタミンB12は回腸末端)ため、結腸切除で貧血が進行する機序もない。
身長176cm、体重68kg(入院時70kgから2kg減)でBMIは約22であり、標準体重の範囲にある。総蛋白7.0g/dL、アルブミン5.1g/dLと栄養状態も良好である。減量の必要はなく、むしろ術後の回復に必要なエネルギーと蛋白を確保する時期である。
後期ダンピング症候群のことを指していると考えられるが、これは胃切除後に、食物が急速に小腸へ流入して糖が急激に吸収され、インスリンが過剰に分泌されることで起こる。胃の貯留機能は保たれているため、結腸切除では生じない。
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混同しやすいポイント
切除された臓器の機能から症状を導く、という考え方が要点である。胃切除ならダンピングと貧血(内因子の減少によるビタミンB12欠乏)、回腸末端切除ならビタミンB12欠乏と胆汁酸性下痢、結腸切除なら水分吸収の低下による下痢、と部位ごとに整理する。設問の検査値がすべて正常であることも、誤肢1・3を消す根拠になる。
理解を深める
結腸切除後の食事指導では、下痢が続く間は、消化のよいもの、脂質を控えめに、刺激物やアルコール、冷たい飲み物を避けるといった工夫を伝える。食物繊維は、不溶性のものが多いと便量が増えて下痢を助長することがある一方、水溶性のものは便の性状を整える。個人差があるため、少量ずつ試して自分に合うものを見つける方法を勧める。水分と電解質の補給は下痢が続く間は重要である。多くは数か月かけて安定していく。また大腸癌の術後は、再発の早期発見のため定期的な検査(CEAなどの腫瘍マーカー、CT、大腸内視鏡)が必要で、この事例のように受診を先延ばしにする傾向のある人には、術後の受診継続の意味を丁寧に伝える必要がある。仕事への復帰時期は、術式と職種によるが、腹腔鏡下手術では比較的早い。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が検査値と矛盾するもの、他臓器の切除で起こる症状で構成されている。示された検査値をすべて確認する習慣があれば消去できる。
5分で振り返る
①大腸は水分と電解質を吸収し便を形成する。②結腸切除で吸収面積と貯留部が減り下痢傾向になる。③多くは時間とともに代償され改善する。④胃切除ならダンピングとB12欠乏、回腸末端切除ならB12欠乏と胆汁酸性下痢。⑤検査値が正常なら貧血や低栄養は否定できる。⑥術後の定期検査の継続を伝える。
1分チェック
- 左半結腸切除後に起こりやすい変化は何か。→ 下痢(水分吸収の低下)。
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