次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(21歳、女性、大学生)は半年ほど前から疲れやすさを自覚していた。その後、安静時にも息切れと動悸が出現するようになり、1か月前から所属するテニスサークルを休んでいる。数日前からは手が震えるようになり、学業にも支障が出てきた。頻繁に汗が出ると自覚しており、母親から「首が腫れている」と指摘され受診した。受診時は、身長160cm、体重44kgで半年前から6kg減少している。体温37.5℃、呼吸数22/分、脈拍132/分、血圧152/70mmHgであった。
診察の結果、 Basedow disease Basedow〈バセドウ〉病が疑われ、甲状腺アイソトープ(123I)摂取率 検査を受けることになった。 検査前の食事で制限するのはどれか。
公式正答:3
解説
バセドウ病が疑われ甲状腺アイソトープ(123I)摂取率検査を受ける患者で、検査前に制限する食品を問う。海藻類である。
この問題で問われていること
検査の原理から、何を制限すべきかを導けるか。
しくみから理解する
甲状腺は、血中のヨウ素を取り込んで甲状腺ホルモンを合成する。アイソトープ摂取率検査は、放射性ヨウ素を投与し、甲状腺がどの程度取り込むかを測定することで機能を評価する検査である。事前にヨウ素を多く含む食品を摂取していると、甲状腺内のヨウ素が飽和し、投与された放射性ヨウ素の取り込みが低下して、正しい評価ができない。海藻類(昆布、わかめ、ひじき、海苔)は日本の食生活でヨウ素の主要な供給源であるため、検査前に制限する。昆布だしを使った食品や、ヨウ素を含むうがい薬、造影剤にも注意が必要である。
選択肢ごとの確認
ヨウ素をほとんど含まず、制限の対象ではない。
ヨウ素の含有量は少ない。制限は不要である。
これもヨウ素をほとんど含まない。なお野菜に含まれるビタミンKは、ワルファリン内服中の患者で制限が問題になるが、この検査とは関係しない。
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混同しやすいポイント
検査ごとに制限する食品が異なるため、目的と結びつけて覚える。甲状腺のヨウ素検査ではヨウ素(海藻)、便潜血検査では以前は肉類やビタミンC(現在の免疫学的検査では原則不要)、大腸内視鏡では種子や繊維の多いもの、消化管造影では検査前の絶食といった具合である。『何を測るのか』から『何が邪魔になるのか』を導く。
理解を深める
バセドウ病は、TSH受容体に対する自己抗体(TRAb)が受容体を刺激し続けることで甲状腺ホルモンが過剰に産生される自己免疫疾患である。この患者にみられる体重減少、動悸、頻脈(132/分)、手指振戦、発汗過多、微熱、甲状腺腫大は、いずれも代謝亢進と交感神経の緊張を反映した典型的な症状である。血圧152/70mmHgと脈圧が開大しているのも、心拍出量の増加によるものである。診断は、FT3・FT4の上昇とTSHの低下、TRAb陽性、そして甲状腺の摂取率上昇による。摂取率検査は、同じく甲状腺中毒症を呈する無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎(これらは破壊による放出であり摂取率は低下する)との鑑別に有用である。
間違えやすい考え方
検査の前処置を問う型で、原理を知っていれば一択になる。丸暗記でも解けるが、他の検査に応用するには原理から理解しておく。
5分で振り返る
①甲状腺はヨウ素を取り込んでホルモンを合成する。②事前のヨウ素摂取は取り込みを低下させ検査を妨げる。③海藻類(昆布・わかめ・ひじき・海苔)を制限、昆布だしやうがい薬にも注意。④バセドウ病では摂取率が上昇、破壊性甲状腺炎では低下。⑤診断はFT3・FT4上昇、TSH低下、TRAb陽性。
1分チェック
- 甲状腺アイソトープ検査の前に制限するのは何か。→ 海藻類(ヨウ素)。
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