次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(21歳、女性、大学生)は半年ほど前から疲れやすさを自覚していた。その後、安静時にも息切れと動悸が出現するようになり、1か月前から所属するテニスサークルを休んでいる。数日前からは手が震えるようになり、学業にも支障が出てきた。頻繁に汗が出ると自覚しており、母親から「首が腫れている」と指摘され受診した。受診時は、身長160cm、体重44kgで半年前から6kg減少している。体温37.5℃、呼吸数22/分、脈拍132/分、血圧152/70mmHgであった。
A さんは Basedow disease Basedow〈バセドウ〉病と診断され抗甲状腺薬での治療が開始された。 A さんには、疾患を正しく理解し、定期受診や内服の自己管理が行えるよう指導 が行われた。A さんは「薬が必要だと分かったけれど、副作用が怖い」と訴えてい る。 早めの受診が必要な副作用(有害事象)はどれか。
公式正答:3
解説
抗甲状腺薬による治療を開始した患者で、早めの受診が必要な副作用を問う。発熱である。
この問題で問われていること
薬剤の重篤な副作用を、患者が気づける徴候として説明できるか。
しくみから理解する
抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)の最も重篤な副作用は無顆粒球症である。好中球が著しく減少するため、細菌に対する防御が失われ、重症感染症から敗血症に至る危険がある。多くは投与開始から2〜3か月以内に生じる。患者が自覚できる最初の徴候は、突然の発熱と咽頭痛である。したがって、これらが出たら自己判断で解熱薬を飲んで様子をみるのではなく、直ちに服薬を中止して受診し、白血球数を確認する必要がある。この指導が生命を守ることに直結する。
選択肢ごとの確認
抗甲状腺薬の代表的な副作用ではない。口渇は糖尿病、脱水、抗コリン薬の副作用などで問題になる。
甲状腺機能亢進症そのものでも脱毛はみられ、また抗甲状腺薬でも生じうるが、生命に関わるものではなく緊急受診の対象ではない。
薬疹として比較的高頻度にみられる副作用だが、多くは軽症で、薬剤の変更や抗ヒスタミン薬で対応できる。緊急性は無顆粒球症に劣る。ただし全身の発疹や粘膜症状を伴う場合は重症薬疹の可能性があり別の判断になる。
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混同しやすいポイント
『頻度の高い副作用』と『緊急性の高い副作用』を区別する。皮膚症状は頻度が高いが緊急性は低く、無顆粒球症は頻度は低い(0.2〜0.5%程度)が致死的になりうる。患者指導では、後者を確実に伝えることが優先される。『発熱と咽頭痛が出たら、すぐに薬をやめて受診する』という一文で伝えるのが実用的である。
理解を深める
抗甲状腺薬のもう一つの重篤な副作用に肝機能障害があり、とくにプロピルチオウラシルでは重篤な肝障害の報告がある。定期的な血液検査で白血球数と肝機能を確認する。バセドウ病の治療には、薬物療法のほかに放射性ヨウ素内用療法と手術があり、それぞれ利点と欠点がある。妊娠を希望する場合や妊娠中の薬剤選択は重要で、妊娠初期はチアマゾールによる催奇形性が問題になるためプロピルチオウラシルが選ばれる。この患者は21歳の女性で将来の妊娠についても心配を述べており、治療の選択と時期について医師と相談できるよう支援する必要がある。服薬の自己中断は甲状腺クリーゼ(高熱、頻脈、心不全、意識障害を伴う致死的な状態)の誘因になるため、継続の重要性も伝える。
間違えやすい考え方
『早めの受診が必要な副作用』を問う型で、4肢すべてが薬剤の副作用として起こりうる。緊急性という軸で選ぶ。
5分で振り返る
①最も重篤な副作用は無顆粒球症、開始2〜3か月以内に多い。②徴候は突然の発熱と咽頭痛→直ちに中止し受診。③皮膚症状は頻度が高いが緊急性は低い。④プロピルチオウラシルでは重篤な肝障害の報告。⑤妊娠初期はチアマゾールの催奇形性のためPTUを選ぶ。⑥自己中断は甲状腺クリーゼの誘因。
1分チェック
- 抗甲状腺薬で発熱が出たらどうするか。→ 無顆粒球症を疑い、直ちに中止して受診する。
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