次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒によるfemoralfracture大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。
A さんは「私らしく死にたいの」と何度も看護師に話すようになった。 看護師の声かけで最も適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
施設での看取りに同意している102歳の入所者が「私らしく死にたいの」と繰り返す場面での声かけを問う。どうしたいかを教えてほしいと尋ねることである。
この問題で問われていること
本人の言葉を受け止め、その内容を具体的に聴き取ることができるか。
しくみから理解する
『私らしく死にたい』という言葉は、抽象的でありながら、本人にとっては切実な願いである。何度も繰り返しているのは、まだ誰にも具体的に聴き取ってもらえていないからとも考えられる。ここで必要なのは、その『私らしく』が何を指すのかを本人の言葉で語ってもらうことである。誰にそばにいてほしいか、どこで過ごしたいか、何をしていたいか、何をされたくないか。それが分かって初めて、その人らしい最期を具体的に支えられる。開かれた問いで本人に語ってもらうことが、意思を尊重する第一歩になる。
選択肢ごとの確認
本人が死について語ろうとしているのに、それを打ち消す応答である。話題を封じることになり、本人は二度と語れなくなる。励ましは、死に向き合おうとしている人にとって拒絶として届く。
寄り添う姿勢を示す点で悪い応答ではないが、本人が何を望んでいるかを聴かないまま看護師の側の対応を先に示している。本人の『私らしく』が、そばにいてもらうことなのかは分からない。まず聴くことが先になる。
本人の思いを、家族への配慮という理由で封じている。本人が自分の死について語る権利を否定する応答であり、罪悪感を与えることにもなる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
終末期の対話では、こちらが何かを言うより、相手に語ってもらうことのほうが支援になる場面が多い。誤肢1・4は話題を閉じ、誤肢2は先回りしている。開かれた問いで本人の言葉を引き出す応答を選ぶ。沈黙を恐れず、答えを待つ姿勢も含まれる。
理解を深める
この事例では、本人が延命処置を希望しないことを表明し、家族も看取りに同意している。しかし『延命処置をしない』という決定と、『どのように過ごしたいか』という願いは別のものである。前者は医療行為の選択、後者は生活と関係の希望であり、後者こそがその人らしさを形づくる。具体的には、好きな音楽、慣れ親しんだ寝具や写真、面会の時間と方法、口から少しでも味わいたいもの、身なりの整え方、宗教的な習慣などが含まれる。これらを聴き取り、記録し、チームで共有することで、本人が語れなくなった後もその意思に沿ったケアを続けられる。アドバンス・ケア・プランニングは、こうした対話の積み重ねそのものである。
間違えやすい考え方
『最も適切なのはどれか』型で、誤肢が『打ち消す』『先回りする』『封じる』という形で作られている。本人に語ってもらう応答を選ぶ。
5分で振り返る
①抽象的な願いは、開かれた問いで具体化してもらう。②励ましや家族への配慮を理由に話題を封じない。③先回りして対応を示す前にまず聴く。④『延命処置をしない』決定と『どう過ごしたいか』の願いは別。⑤聴き取った内容は記録しチームで共有する。⑥ACPは対話の積み重ね。
1分チェック
- 「私らしく死にたい」と言われたら何と返すか。→ どうしたいかを具体的に聴く。
この問題に対応する教材の確認中です。