次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒によるfemoralfracture大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。
A さんはほとんど食事がとれなくなり、尿量も減少してきた。自発的な動きも 減少し、傾眠状態となった。家族はA さんの状態の変化に驚き「本人は苦しいので しょうか。そばにいても良いのかどうかが分かりません」と看護師に話した。 A さんの家族への看護師の説明で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
食事摂取と尿量が減り傾眠となった入所者について、家族が「苦しいのか」「そばにいてよいのか」と尋ねた場面での説明を問う。これからの経過について話すことである。
この問題で問われていること
家族の不安の正体を捉え、必要な情報を提供できるか。
しくみから理解する
家族が驚いているのは、これから何が起こるのか分からないためである。老衰による自然な経過では、食事量と水分摂取が減り、尿量が減少し、傾眠が深まり、やがて呼吸の変化(下顎呼吸、喘鳴)や四肢の冷感・チアノーゼが現れる。これらは終末期の自然な変化としてみられうるが、苦痛がないと一律に判断せず、痛み、呼吸困難、せん妄、分泌物、不安を継続して評価し、必要な緩和ケアを行う。この見通しをあらかじめ伝えておけば、家族は変化を『悪化』ではなく『経過』として受け止められ、動揺が和らぐ。また、そばにいてよいのかという問いには、そばにいることに意味があると伝えることになる。説明そのものが、家族が最期の時間を過ごすための支援になる。
選択肢ごとの確認
根拠がなく、また家族の関わりを無意味なものにしてしまう。意識レベルが低下しても、聴覚は比較的最後まで保たれるとされ、声かけや手を握ることには意味がある。感じないと伝えることは、家族が関わる動機を奪う。
家族を遠ざける対応である。看取りの時期には、家族ができるケア(口腔の保湿、手足をさする、体位の工夫、声をかける)に参加してもらうことが、本人の安楽と家族のグリーフケアの両方につながる。何もできなかったという思いは後悔として残りやすい。
家族に過度の緊張と責任を負わせる。看取りは家族が交代で休息をとりながら過ごすもので、常時の監視を求めれば疲弊する。職員が観察していることを伝え、安心して過ごせるようにする。
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混同しやすいポイント
看取りの場面で家族が抱く不安は、多くの場合『分からないこと』から来る。したがって情報提供が最も直接的な支援になる。誤肢はいずれも、家族を安心させようとしたり遠ざけたりする方向だが、いずれも家族の関わりを減らす結果になる。関わりを支える方向で選ぶ。
理解を深める
看取りのパンフレットを用いた説明は、多くの施設と病院で行われている。予測される経過(食事量の低下、尿量減少、傾眠、呼吸の変化、循環の変化)と、それぞれが自然な過程であること、そのときにできること(そばにいる、声をかける、手を握る、口を湿らせる)を具体的に示す。とくに死前喘鳴(分泌物が咽頭で振動する音)は苦しそうに聞こえるが本人の苦痛とは限らないこと、下顎呼吸は終末期の呼吸パターンであることを、事前に伝えておくと家族の動揺が小さくなる。家族へのグリーフケアは、亡くなる前から始まっている。看取り後には、労いの言葉をかけ、必要に応じて遺族会や相談窓口を案内する。職員自身のグリーフケアも施設として整えることが望ましい。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が根拠のない断定、家族の排除、過度の負担で構成されている。家族の問いに何が答えになるかを考える。
5分で振り返る
①老衰の自然な経過=食事量低下・尿量減少・傾眠・呼吸の変化・四肢の冷感。②見通しを伝えると変化を経過として受け止められる。③聴覚は比較的最後まで保たれる、声かけには意味がある。④家族にできるケアに参加してもらう。⑤常時の監視を求めず休息を促す。⑥死前喘鳴と下顎呼吸は事前に説明しておく。
1分チェック
- 看取り期に驚いている家族に何をするか。→ これからの経過を説明する。
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