次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒によるfemoralfracture大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。
A さんは深い昏睡状態となり、四肢の冷感、チアノーゼ、喘鳴および下顎呼吸 が出現してきた。医師は家族にA さんの死期が近いことを説明した。 看護師の対応で最も適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
深い昏睡、四肢冷感、チアノーゼ、喘鳴、下顎呼吸が出現し死期が近いと説明された場面での看護師の対応を問う。家族と過ごせるよう居室を整備することである。
この問題で問われていること
臨死期に何を優先すべきかを、本人と家族の両方の視点から判断できるか。
しくみから理解する
下顎呼吸、深い昏睡、四肢の冷感とチアノーゼは、死が数時間以内に迫っていることを示す徴候である。この段階では、医療的な処置によって経過を変えることはできず、また本人は延命処置を希望していない。したがって優先されるのは、残された時間を本人と家族がおだやかに共にできるよう整えることである。居室を整えるとは、家族が座って過ごせる椅子を用意する、照明と室温を調整する、不要な物品を片づける、プライバシーを確保する、静かな環境を保つ、といった具体的な配慮を指す。これにより家族は落ち着いてそばにいられ、本人にとっても穏やかな環境になる。
選択肢ごとの確認
平時には安楽を高めるケアだが、この段階では循環が破綻しており、体位変換や下肢の操作が負担になる。また家族と過ごす貴重な時間を処置に使うことになる。四肢の冷感には、保温や軽くさするといった負担の少ない方法で対応する。
喘鳴(死前喘鳴)は咽頭の分泌物によるものだが、吸引は刺激が強く、粘膜を傷つけ、本人に苦痛を与えうる。またいったん引いてもすぐに再貯留するため効果は一時的である。体位を側臥位気味にして分泌物が流れやすくする、口腔の保湿を行う、といった方法が優先される。家族には、この音が本人の苦しさを意味するとは限らないことを説明する。
本人は延命処置を希望せず、家族も看取りに同意している。その意思に反する行為であり、行ってはならない。事前の意思表示が共有されていることの意味が問われている。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
誤肢3は、意思決定の尊重という点で最も重大な誤りである。事例に『延命処置を希望しない』『家族も同意』と明記されており、これを踏まえない対応は選べない。誤肢1・2は、平時には適切なケアだが、この段階では負担になる。時期によってケアの適否が変わることを理解する。
理解を深める
臨死期の看護では、苦痛の緩和と、その人らしさの尊重、そして家族への配慮が柱になる。身体的には、口腔の保湿、体位の工夫(分泌物が流れやすく、呼吸が楽な体位)、保温、皮膚の清潔、不要な処置とモニターの中止を行う。環境としては、静かで落ち着ける空間、家族が付き添える設備、本人が好んだ音楽や写真の配置がある。家族には、そばにいてよいこと、声をかけてよいこと、触れてよいこと、交代で休息をとってよいことを伝える。死亡後には、エンゼルケアを家族とともに行うことが、別れの時間となりグリーフケアにつながる。施設での看取りでは、他の入所者への配慮と、看取りに関わった職員の振り返り(デスカンファレンス)も含めて体制を整える。
間違えやすい考え方
『最も適切なのはどれか』型で、誤肢に本人の意思に反する行為が含まれている。事例に書かれた意思表示を必ず参照する。
5分で振り返る
①下顎呼吸・深い昏睡・四肢冷感とチアノーゼは死が迫った徴候。②延命処置を希望していない意思を尊重する。③死前喘鳴に吸引は苦痛、体位と保湿で対応。④足浴など負担のある処置は控える。⑤家族が落ち着いて過ごせる環境を整える。⑥死亡後のエンゼルケアもグリーフケアの一部。
1分チェック
- 死期が迫った看取りの場面で何を優先するか。→ 家族と過ごせる環境を整えること。
この問題に対応する教材の確認中です。