次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(7歳、女児)は両親と弟(2歳)の4人で暮らしている。下校中に転倒して右手を地面についた。夕食時に母親がAちゃんの異変を感じ、Aちゃんに尋ねたところ「転んで肘が痛い」と話したため救急外来を受診した。その結果、利き腕である右側のfractureofhumerus上腕骨の骨折が判明したため、入院して直ちに全身麻酔下で内固定術を受け、ギプス固定された。
術後に注意すべきA ちゃんの状態はどれか。
公式正答:4
解説
上腕骨骨折で内固定術とギプス固定を受けた7歳児で、術後に注意すべき状態を問う。フォルクマン拘縮である。
この問題で問われていること
固定による循環障害が、どのような不可逆的な後遺症を招くかを理解しているか。
しくみから理解する
小児の上腕骨顆上骨折は、肘の腫脹が強く、ギプスや包帯による圧迫が加わることで、前腕の筋区画(コンパートメント)の内圧が上昇しやすい。内圧が動脈の灌流圧を超えると、筋と神経が虚血に陥る。この状態が数時間続くと筋が壊死して線維化し、手指と手関節が屈曲位で固まる不可逆的な拘縮となる。これがフォルクマン拘縮である。上肢の機能を大きく損なうため、発症を防ぐことが決定的に重要で、術後の観察が予防そのものになる。
選択肢ごとの確認
指先が太鼓のばちのように膨らむ変化で、慢性の低酸素状態(先天性心疾患、慢性呼吸器疾患、肺癌など)を反映する。骨折の術後に生じるものではない。
発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の乳児で、股関節を開排したときに大腿骨頭が整復されて生じる音や感触である。乳児の股関節の診察所見であり、この事例とは無関係である。
床から立ち上がる際に、自分の膝や大腿に手をついてよじ登るようにする動作で、Duchenne型筋ジストロフィーなど近位筋の筋力低下を示す所見である。骨折とは関連しない。
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混同しやすいポイント
小児に特徴的な整形外科の所見と徴候を混同しないよう、疾患と結びつけて覚える。ばち指=慢性低酸素、クリックサイン=発育性股関節形成不全、Gowers徴候=筋ジストロフィー、フォルクマン拘縮=上肢の阻血性拘縮。名称だけでは何を指すか分からないため、対応表で覚える。
理解を深める
観察は5P(疼痛 Pain、蒼白 Pallor、知覚異常 Paresthesia、麻痺 Paralysis、脈拍消失 Pulselessness)で行うが、脈拍消失は最終段階の所見であり、それを待ってはならない。最も早期かつ鋭敏な所見は、他動的に指を伸展させたときの強い疼痛と、鎮痛薬で治まらない不釣り合いに強い痛みである。小児では痛みを正確に表現できないことがあるため、機嫌、啼泣、指を動かそうとしないといった行動の変化も手がかりになる。異常を認めたら、直ちにギプスや包帯を緩め、患肢を心臓の高さに保ち(挙上しすぎると灌流圧が下がる)、医師に報告する。必要であれば筋膜切開が行われる。予防としては、術後の腫脹を見越した固定、患肢の観察を頻回に行うこと、家族への観察点の説明が重要である。
間違えやすい考え方
所見の名称を並べる型で、他はいずれも小児で有名だが別の疾患の徴候である。骨折とギプス固定という状況から、循環障害を連想できるかで決まる。
5分で振り返る
①前腕のコンパートメント内圧上昇→筋と神経の虚血→不可逆的な拘縮。②観察は5P、最早期は他動伸展時痛と不釣り合いに強い痛み。③脈拍消失は末期の所見、待たない。④異常時は固定を緩め心臓の高さに保ち医師へ報告。⑤ばち指=慢性低酸素、クリックサイン=股関節、Gowers徴候=筋ジストロフィー。
1分チェック
- 上腕骨骨折のギプス固定で最も警戒する後遺症は何か。→ フォルクマン拘縮。
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